読書

近藤史恵さん新作、「旅するカフェ」シリーズが進化してた!

近藤史恵さんは、新作が出ると必ず読んでしまう作家さんです。

人間の心の奥深く暗いところ(ダークサイド、ですかね)を懐中電灯で照らしながら覗き込むような、ドキドキさせてくれる軽いミステリー仕立ての作品が多く、これまで期待を裏切られたことがありません。

たとえば代表作の1つ「サクリファイス」は、プロのロードレーサー(自転車)の裏側を見事に描き出した作品で、実に骨太です。
あまりにもリアルなので、もしや過去に自転車関係の仕事をしていた?と思ったら、自転車には乗りもしないというんだから、その取材力と筆致力は本当にスゴイ。

 

その他にも…と言いたいところですが、きりがない。
今日の本題である、近藤さんの最新作「それでも旅に出るカフェ」に移ります。

「ときどき旅に出るカフェ」という作品の続編で、前作よりもさらに面白くなってる!

「旅に出るカフェ」シリーズは、会社を辞めてカフェを開いた女性が主人公。
カフェの女性オーナーだからといってキラキラ、ふわふわした感じではなく、むしろ色んな人間関係のドロドロに巻き込まれ、ヒヤヒヤゾクゾクする展開。

ただし、そんな暗い感じにならないのは、このカフェが、タイトルの通り、主人公であるカフェの女性オーナー円(まどか)さんが、世界を旅して見つけてきた美味しそうなご飯、スイーツ、ドリンクなどを再現して提供するお店だから。

お客さんは、カフェに来るだけで世界を旅した気分になれるという設定で、もちろん読者も気づいたらすっかり「その気」になっちゃいますね。

物語の展開と結末には必ず世界の珍しい食べ物が関係していて、そのチョイス、描き方。
めちゃくちゃ美味しそうだし、聞いたこともないものばかりで、こっちの面ではワクワクしどおしです。

いやー、こんなお店があったら絶対通ってしまう!!

たとえばわたしがいち早く試してみたいと思っているのは、オーストリアの国民的飲料(らしい)アルムドゥドラー


(写真お借りしています)

このドリンクは、何度もストーリーに出てくるのですっかりおなじみの気持ちになってるんだけど、もちろん飲んだことはない(笑)

レモンバーム、セージ、リンドウ、エルダーフラワー、コーンフラワーなどアルプスのハーブをブレンドしたレモネードのような爽やかな味わいで(人によっては養命酒みたい、と感じる人もいるらしい)、オーストリアではコーラと並ぶくらいメジャーなドリンクとのこと。アルプスのハーブ!飲んでみたい。

あと、エストニアのコフピームを使ったシュークリーム。
コフピームって名前だけ聞くと「???」なんだけど、要するにチーズクリームのこと。
カッテージチーズのような、コクと甘みの中に、かすかに酸味を感じるクリームだそうで、エストニアでは国民食らしい。これで作ったケーキやシュークリーム、きっとふわっとさらりとしていて、美味しいだろうなぁ…

スロベニアのブレッドクリームケーキは、この本の表紙にもなっている。

この写真、美味そうが限界値超えてません?!

パイ生地の間にカスタードクリームと生クリームが2層になってて、この組み合わせが美味しくないはずないよね。ブレッド湖の名物だそう、現地で食べてみたいなぁ。
がスロベニア、なかなか行けないよね(笑)

さて、今日の気温は35度。インドのアイスクリームであるクルフィも今すぐ食べたい。
濃厚なミルクとカルダモンの香りがする、ナイフで切って食べるデザート。
ナッツも香ばしく散らしてあるらしい。暑いときに元気が出そう。
他の情報によると、超低温で、「溶けないアイス」と言われているらしい。
どゆこと?(笑)

(写真お借りしています)

きわめつけは、「鳥のミルクのケーキ」。もうなんのこっちゃか全然わからないけど、カスタードムースとスポンジが層になり、チョコレートのかかったケーキなんだって。

ロシア人が好きなケーキらしいけど、その周辺の国でも食べてられているみたい。もちろん、ウクライナでも。
同じケーキを愛する国同士が争うなんて、と思わずにはいられないですよね。

あーあ、この間フランスから帰って、所持金を使い果たしてきたのに、また出かけたくなってしまった…

ちなみに、1作目「ときどき旅に出るカフェ」もすごく面白かったのですが、2作目「それでも旅に出るカフェ」が(わたし的に)さらに良かったのは、料理製作に郷土菓子研究家の林周作さんが関わっておられるからかな、と思いました。

林さんは、エコール辻大阪フランス・イタリア料理課程を卒業したものの、“郷土菓子”の魅力に気づいてしまい、フランスのパティスリーで修行したのち、2012年6月から約2年半をかけ自転車で(なんで!)ユーラシア大陸を横断する旅へ出たという、ぶっとんだ人物。

50か国、500種類のお菓子を食べたそうな。
そんな経験を本で追体験させてもらえるなんてありがたいことです。

コロナが一段落したとはいえ、まだなかなか海外までは出かけられない人も多いことと思います。

そんなときは、ゆっくりお茶を淹れてこの本を開いて頂くと、ひととき別世界に夢中になれることと思います。おすすめ!