海外旅行

パリ在住の辻仁成さんの「推し」になった話(急に)

辻仁成さん。

ロックバンドのボーカルとしてデビューしたミュージシャンでありながら、数々の文学賞を受賞した売れっ子作家でもあり、かつ映画監督や演出家もこなす。


写真お借りしています

わたしが説明するまでもない有名な方ですが、稀有でマルチな才能を持ったアーティストの方です。

今までは、いくつかの著作を除いては、辻さんについてあまり詳しくはなかったわたし。

しかし、フランス旅行をきっかけに、急速にお近づき(バーチャルな意味)になりました。

どういうことかと言うと、旅行準備のために、ネットでフランスのことを調べていると、いつのころからか、フランス在住の日本人の方々によるウェブマガジンにしょっちゅう行き当たるようになったんですよね。

それが、辻仁成さんの主宰するウェブマガジンだと知ったのはしばらくしてから。

Design Stories

すると、ここに連載されている辻さんのブログ=滞仏日記が検索するまでもなく上がってくるようになったので、何気なく読み始めたんですが、これが何というか、妙に癖になるブログで…

「~なのであーる」が決まり文句。
「であーる」って…という衝撃。

もちろん、他にも流麗なトーンの文章はたくさん書かれてあるので、「であーる」がすべてではないのだけど、ここでは崩したというか?ともかく力の抜けた感じが、妙に癖になる。

すごく好きになってしまったのであーる。

このブログを拝見していると、「旅行ではない、暮らすパリ」ってこういう感じなんだなぁ、とか、「60代のシングルライフってこんな感じ?」など、妙に興味が尽きない。

しかも、文中には、事務所スタッフの”長谷っち”やら”岡っち”やら、息子さんやら、愛犬の三四郎ちゃんやら、個人(個犬?)名が惜しげもなく出てくるので、だんだん、勝手に知り合いみたいな気分に。

オープンさに、グッと親近感!!!

還暦を過ぎた辻さん。
パリの由緒ある劇場でライブをしたり、オンラインツアーを配信したりと、のびのびと楽しそう。前向きに挑戦する姿には心底感心してしまいます。

新しいことって億劫なんだけどな~

一方、たまに「パートナーが欲しい」みたいなことをボソっと言っていたりすると、謙遜だろと思いつつも、なんだか心配に…

もう近所のおばさんの心境。

他のところでもおっしゃっているので本気なのかも↓
辻仁成 還暦直前で初告白「老後のパートナーが欲しいけど…」

しかし、ここでふと振り返ってみる。

「辻仁成」って、「こういう人」だったっけ?

わたしにとっての辻仁成さんは、何といっても「冷静と情熱のあいだ」という恋愛小説を大ヒットさせた人気作家という印象が何より強い。

「冷静と情熱のあいだ」は、辻仁成さんと江國香織さんの交互連載という珍しいスタイルをとった小説(1999年出版)。

当時わたしが好きだったイタリアが舞台であったこと、辻さん&江國さんの両方の文章が素晴らしかったこと、さらに主人公の絵画修復士という職業について詳しく書かれていて興味深く、かなり愛読しました。

辻さん執筆

江國さん執筆

さらにさらに、かつてあの中山美穂さんを射止めた色男、というのもまた、インパクトが強大。

中でも、中山美穂さんと初対面のときの「やっと会えたね(注)」という辻さんのセリフは、当時一大センセーションになったような気がする。

注)「やっと会えたね」はご本人いわく、記者の捏造でありご本人は言った覚えがないらしい(著書:「不屈」による)。

と、情報は古めなんだけれども、そんなだから、ともかく「辻仁成=すべてを手に入れた男」みたいな印象がずっとありました。
だからちょっと凄すぎて近づきがたい、という感じ。

しかし、中山美穂さんと離婚されたあと、息子さんを引き取ってシングルファーザーとなった辻さんは、急にキャラクターが変わった(ように見える)。

フランス育ちの息子さんのためにパリに残り、仕事をセーブして毎日手作りの料理をチャッチャとこなし、愛情のこもったお弁当を作り続けている。

そんなメディアからの情報が、見ようとしなくても勝手に流れてきていたので何となく知ってはいたけど、長いことスルーしていました。

だって、”あの”華やかでキザな辻仁成さんが、急にアットホームなシングルファーザーになった、と言われても…

にわかに信じがたい。
正直、そんな感じ。

それが、フランス旅行をきっかけに、とにかくしょっちゅう目に飛び込んでくるものだから、気づいたら最近の辻仁成さんの文章を毎日のように読むようになっていました。

一度読み始めると、すごく引き込まれるんですよね。

まぁ当たり前か、芥川賞だけでなく、その他の文学賞も多数受賞してるくらいの作家なんだもの。

ただいくら小説家と言っても、毎日のように発信するブログでキャラクターを偽るのはたぶんムリだと思うんです。

並列で書くのは失礼なんですが、わたしも、ブログではどうしても自分の本質が隠し切れないなぁ、イヤなところも漏れ出しているんだろうなぁ、などと思いつつ書いています。

だから辻さんのブログをずっと読んでいるうちに、あ、辻さんは本当にすごいアーティストで、誠実な父ちゃんで、犬を溺愛する優しい飼い主なんだなと、だんだんわかってきました。

犬のためにご飯を手作りできる人に、悪い人はいないと思う。
滞仏日記「過保護なうちの犬に餌を作ったり、愛をください、と歌ったりの孤独な父ちゃん」
わたしの母も犬のためにずっと「鶏肉と白菜の煮込み」を作ってた。
白菜を食べさせると、犬のお通じが良くなるって言ってたなぁ。

辻さんのブログは、フランスのガイドとして見てもとても楽しいので、フランス旅行中はとても参考にして、なんだかんだ言って紹介されているところをけっこう訪ねたりもしました。

奇才の作曲家エリック・サティの生家に行ってみたり…(この場所、辻さんの評価はイマイチなんだけど)
滞仏日記「エリック・サティが生まれた家まで行ってきた。空も海もシュールな」

フランスである日、一晩中外がうるさいので何なんだと思ったら↓と教えて頂いたり
退屈日記「夏至の日は、パリ音楽祭の日! フランスが全土で朝まで無礼講になる日!」

パリで大人気の日本人パティシエのケーキ屋さんに行ってみたり
甘党パリ団日記「父ちゃんがパリで一番好きなケーキ。マレ地区の片隅で食べつくせ」

ここは行ってみたけど閉まっていた~!
滞仏日記「ノルマンディで一番美味しいガレット屋さん発見!不思議なガレットだったぁ」

とまぁ、色々追体験までしてきました。

もう、これ推し活ってやつ??

だけど、このあたりまで来て、わたしは衝撃を受けました。

改めて調べてみると、「辻さん、素敵、いい人」みたいなことは、わたし以外の人はみーんな、とっくに知ってた感じ!!

今日、わたしは、何をいまさら、って感じのことをずーっと書いてる。

それは、Amazonの評価を見ても、Twitterの反応を見ても、わかります。

つまり、わたしって、マスコミによる最初の印象で決めつけるタイプ。
さらに、そのあとずーっと情報をアップデートできないタイプ。

そういう人間だったんだ~という衝撃です。

自分がハズイ。反省と後悔。

ともあれ、今現在、辻仁成さんの息子さんは大学生となり、辻さんは子育てを一段落終えつつあるようです。
わたしは子どももないのでよくわからないけど、”還暦”という年齢も相まって、人間が「ゆっくり素に返る」ような時期なのでしょうか。

もしかして、本当の辻さんは、昔から料理と犬を愛する中性的な優しい人だったのだけど、必要があってゴージャスな仮面をかぶっていたのだろうか。
それとも昔は本当にキザな男だったけど(失礼)、色んな人生経験を経て、徐々に変貌したのだろうか。

前者だとしたら、長い間「かっこつけざる」を得ないような状況にあって、苦しいこともあったのだろうか。
後者だったら、人間というものの「変化の振れ幅」みたいなものに驚愕してしまう。

いやいやだからね、そういうのすべてが、メディアが何となく作る「辻像」に過ぎないだけかもしれないけれど。

うーん、ぐるぐる回って何がなにやらわからない。

でも、確かなことは、人間というのは多面性を秘めているもんなんだな。ということかもしれない。

わたしももしかしたらまだ変化の可能性があるのかな。

辻仁成さんはわたしよりちょうど一回り(12歳)年上。
一足先に人生を走っている人だから、考え方や感じ方など、「この年齢になったらこういうことを思うのか」など、とても参考になります。

目が離せないというか、要するに、今はかなりファンの部類に入るのであーる。

ーーー

今日、何が言いたいかというと、突き詰めると「旅っていいよね」ってことなんです。

フランス旅行をしようと思わなかったら、たぶんずっと遠巻きに見ていて辻仁成さんの発信に触れることもなかったし。

この年になると、リアルなお友達を増やす機会は少ないけど、こうして勝手に応援、推したくなる人が見つけられるのは嬉しい。

旅行を計画すると、それまで目に入らなかった書籍や映画、音楽、人物etc、急に気になることが増えるんですよね。

「視野が広がる」というとありきたりな言い方だけど(ビジネスパーソンなら「視座が変わる」とか言うのかな?)、実際そうだと思う。

旅行は、旅行前も、旅行中も、旅行後にも、得るものが多い。

だからやめられないのかな~。

辻仁成さんの、ますますのご活躍をお祈りしています。