小さな林業の始め方

【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ⑳ 豪雨災害に際して想うこと

yasu
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こんにちは、ななみのオットのヤスと申します。46才で脱サラし、高知に移住して自伐型といわれる小さな林業を5年間実践してきた本人の目から見た、その林業の世界を紹介したいと思います 

まずはじめに、今回の熱海で発生した土石流の被害に遭われた方々、そして避難を余儀なくされている方々に、心よりお見舞い申し上げます。

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他人事ではない豪雨災害

高知県の中山間地域に移住して林業を始めてから、全国各地で発生する豪雨災害や土砂災害が、とても他人事には思えなくなりました。

まず、現在住んでいる場所が「土砂災害警戒区域」(通称:イエローゾーン)に指定されており、敷地の一部は更に危険度が高い、「土砂災害特別警戒区域」(通称:レッドゾーン)にも指定されています。

なので、当面の間はこの黄色や赤に色塗られた区域に住み続ける、ということになります。

もう1つの側面は、林業に関わっていることです。

今回の熱海の件でも、上流部における大規模な森林伐採や、そこに至る作業道が、盛土の崩落を誘発した可能性を指摘する専門家もいます。

単純に森林を伐採したことによる保水力の低下だけではなく、作業道を敷設する際の排水処理の問題など、様々な要因が重なった結果かもしれません。

いずれにしろ、私が取り組む小さな林業である自伐型林業でも、規模の大小の差はあっても、気をつけなければいけないポイントは共通しています。

つまり、土砂災害の、被害者にも加害者にもなり得る状態や立場にある、という二重の意味で私にとっては他人事と思えないのです。

自然の脅威と折り合いをつけて暮らすということ

「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」は、確かに字面だけ見ると非常に恐ろしいです。

しかし、県が公表しているハザードマップを見ると、私が住んでいる四万十川流域などは、昔から宅地がある場所の大半は「土砂災害警戒区域」に指定されており、その多くは「土砂災害特別警戒区域」にも近接しています。

四万十川流域だけが特別なわけではなく、これは全国の中山間地域はどこも似た状況なのではないでしょうか。

だからといって「土砂災害警戒区域」に住むことの安心材料にはなりませんが、人々はこうした場所と上手く折り合いをつけて、長年暮らしてきたということです。

なぜそうなるかというと、中山間部には川が流れており、「土砂災害警戒区域」を逃れようとすると、川に近くなり、今度は水害の恐れが出てくるからです。

中山間地域に昔からある家は、山肌にへばりつくように建てられていることが多いのですが、これは、本来は川側よりも山側の方が安心だったからではないでしょうか。(台風の多発地域の高知では特に暴風を避ける意味も含めて)

四万十川は昔から暴れ川とも言われていて、大雨や台風の度に氾濫してきました。

私が四万十川流域に移住してからも、毎年2~3回は近隣で氾濫が起こり、道路が冠水して身動きが取れなくなることがあります。

初めの頃は、現代の日本にそのような場所がまだあることにまず驚いたのですが、慣れてくると、それが当たり前になり、受け入れるようになります。

川が氾濫しても、私が住んでいるような古くからの宅地には影響が及ぶことはほとんどなく、雨が上がってしばらくすれば、すぐに水が引くことも経験的に分かってくるからです。

暴れ川と化した四万十川

 

それでも過去には、私が経験してきたのをはるかに上回る増水の記録もあり、それは地域の電柱跡などに爪痕がしっかり残されています。

これを見ると、

オット
オット
えっ⁈こんなところにまで水が来たの⁈

と恐怖を覚えます。

それでも、上手いことに、我が家はそのラインよりわずかに上のほうに建てられていますし、逆に言えば、いざというときにはさらに裏山に駆け上ればなんとかなりそうだという、ひとつの目安にもなっています。
(もちろん、避難所に避難できる状況ならそれに越したことはないですが・・・)

実は、私の住む地域でも、道路の冠水を防ぐための堤防の造成を行政に嘆願したこともあったようです。(人口規模の小ささから予算がつかず、実現しなかったと聞いています)

住民からすれば、毎年のように起こる川の氾濫を何とかしたいと思うのも当然です。

しかし一方で、仮に四万十川流域各地に堤防が出来ていたらどうなっていたでしょう。

たとえば、私が住むのは河口から20km程の地域ですが、さらに下流部には市街地など、より人口の密集した地域があります。ここに至るまでに無数の堤防があったら、途中で水を逃すこともなく、下流部へ甚大な被害が集中することも考えられます。

もちろんどのエリアにも被害が起こってはならないのですが、開発を見送ったことが、結果的に自然の摂理に極力逆らわない地域を残し、周辺地域の人々の暮らしを守ってきたようにも思えるのです。

林業における豪雨との付き合い方

林業においても、作業道を敷設する際に、雨水の排水方法は非常に重要です。

私が林業を始めて最初の4年間の現場は、数キロに及ぶ既設の作業道の先にありました。

この既設の作業道には排水処理に問題があった為、大雨の度に路面がえぐれるなどして、車両の走行に支障をきたすだけではなく、路肩の崩壊を招く恐れもありました。

雨水によってえぐれた路面

 

師匠の指導も受け、試行錯誤しながら数年かけてこの既設の作業道を全面的に改修した結果、今ではかなり路面が安定するようになりました。

排水処理は、無理に水の流れを抑えたり、強制的に流れを変えるようなことはしません。地形や傾斜、そして水の流れを読んで、なるべく自然の摂理に逆らわず、分散して排水するようにしています
排水処理が上手く機能すると、雨によって地面は固く締まっていきます。まさに「雨降って地固まる」です。(もちろん、基本的な踏み固めは入念に行った上で)

この経験からも、道を良くするのも壊すのも排水処理に依るところが大である、という教訓を得ました。

さらに、皆伐や強度間伐はせずに、山に木を残すことも、保水や表層の土壌流出を防ぐためにも重要です。

高知は全国的に見ても雨量の多い地域ですが、このような自伐方式で施業すれば、豪雨にも強い山作りが出来ることを、この5年間の経験で実感しています。

避けることが出来ない「水」の影響

この、雨、水の影響。日本に住む限り避けることはできません。

ある程度自然の摂理を受け入れて共生するのか、それとも人間の都合で抑え込むのか、豪雨災害が起こる度に考えさせられます。

それではまた次の記事でお会いしましょう。

 

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