先日訪れた神山町で、こんな場所を訪れました。
神山町の、杉の間伐材を利用した木工製品のお店です。
ちょっと覗くつもりが、その製品の美しさに魅了されて、気づいたら即決でお買い上げ・・・
1つ1万円くらいするものを即決で購入するのは、わたしたちにしてはかなーり珍しいことでした。
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しずくプロジェクトとは
WEEK神山に泊っているときに、ふと見かけたのが、このしずくプロジェクトという名前。
これは、大阪から神山町へ移住したデザイナーさんが、
緑豊かな山だと思っていた自然のほとんどが人工林で、水源をも危ぶむ状況だと気づき、デザイナーとして何か役に立てないか?
と思った、そんな問いかけがきっかけに生まれたプロジェクトなのだそうです。
神山町のみならず、日本全国で、人工林が放置されている状態。
手入れをしていないので、枝葉が伸び放題。
すると、日が当たらない=下草が生えない=山の保水力が失われる、という悪循環。
神山町の川の水量も、昔に比べると3分の1まで減っているとか。
山が荒れると川も荒れる、そして海も・・・
山の健康の影響は、本当に大きいです。
プロダクトとしての価値
ただ、わたしたちが「しずくプロジェクト」製品を買って帰ったのは、その理念に共感したからというだけではなく、むしろこの商品そのもののデザイン性にストレートに惹かれたからです。
木製の食器は珍しくないですが、実際に手に取ってみると、「しずく」製品の軽やかさと滑らかさは、ちょっと他とは違う印象。
「きれい」「丁寧」、自然にそういうワードが浮かんできます。
そして、ガラスや陶器と違い、何より温かみがあるので、ずっと触っていたくなる感じ。
杉の木はとても保温力が高いので、冷たいものを入れても、温かいものを入れても、温度が長持ちするとか。
熱いコーヒーを入れても、「あちっ」ってならないのに、温かさが持続するのは魅力的ですね。
そして、洗う立場として大事なのは、手入れのしやすさなんですが、これはウレタンとセラミックを配合したコーティングをしているので、水分や汚れにも強いとのこと。
いくら自然素材といっても、すぐにカビたり変色したりしたら残念だし、あまりにも手入れが大変なのもしんどいので、こういった機能性が高いことも、とても大事です。
「杉の常識」にこだわらない製品づくり
そもそも「杉」はかなり柔らかい木で、加工はしやすいけれど、器のように小さくて繊細なものには向かないというのが一般論。
加えて、杉は、心材と辺材(赤身と白太)がはっきりしているのが特徴で、赤いところは赤いところで、白いところは白いところで、使うのがふつうなんですね。
さらに、木の使い方も、目が縦になるように使うのがふつう。という、あれこれの昔ながらの常識のすべて逆を行ったのが、「しずくプロジェクト」の器づくり。
年輪の色の違いは、「ツートンカラー」という強みに。
目の方向は、横向きに。
職人の技で、杉をあえて食器に。
こういったことをわざわざやってみよう!と思うのは、やっぱり「よそ者」であり、林業家でも木工職人でもない、デザイナーさんという外部の新たな目線から見たから、ならではの発想ではないかなぁと感じます。
選んだマルチボウル
ところで、商品にはいろいろ種類がありまして。
お店では、「口当たりをお試しくださいね」と、わざわざカップにお茶を入れて出してくださって、それもとても魅力的でした。
が、仕事柄、うちには「カップ類」が非常にたくさんあるので、これ以上は増やせないなと。
で、第一印象で、マルチボウルを選択!
すると、「木目はどれもひとつひとつ違うので、好きなものを選んでくださいね」とたくさん出してくださいました。
よくわからないながらも、インスピレーションで選択。
たとえば、クラムチャウダーとか。
アサイーボウルとか。
ボルシチとか。
ミネストローネとか。
どれもほとんど作ったことないけども・・・
いろいろ(イメージだけは)浮かんできてワクワクしています。
ものの値段
ちなみにこのマルチボウルは、ひとつ10,400円(税抜)。
1万円超という価格そのものは、わたしたちの生活水準にとって安いものではないですが、それとものの値段は別の問題。
これを作るまでに、木を伐採して、運んで、乾燥させて、製材して、切って、削って、磨いて・・・という気の長い工程を考えると、とても「高い」とは言えない。
これを作れる職人さんを探したり、育成したりすることを考えたら、むしろ安いのではとすら感じます。
まとめ 「ストーリー」の伝え方
マーケティングの世界では、「ストーリーで買わせる」みたいな話はよくあります。
商品の理念やそれにまつわる物語に共感してもらい、商品購入につなげるという戦略です。
特に「地球に優しい」「安心・安全」「子どもの未来を守る」「地産地消」みたいな枕詞のつく商品は、全国に(いや、世界に)山のようにあります。
もちろん、悪いことではないし、異論もないです。
が、そこばかり推されることには、正直わたし個人はちょっと飽き気味。
そして、地方では、商品の魅力の少なさをストーリーでカバーしょうとしているものも多いような気がします。(辛口)
しずくプロジェクトの商品に惹かれたのは、商品の良さが先にあって、それを支えるストーリーがあって、さらにその両方の伝え方のバランスがとても良く感じたから。
従来の発想にとらわれずに良いものを作り出していく機会は、むしろ「よそ者」のほうにあるのかもしれない、としみじみ感じた次第でした。
本来、予約制にも関わらず、アポなしで訪問してしまいましたが、丁寧に対応くださり大変ありがとうございました。