小さな林業の始め方

【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ⑨ 森林経営について考える

yasu
yasu
こんにちは、ななみのオットのヤスと申します。46才で脱サラし、高知に移住して自伐型といわれる小さな林業を5年間実践してきた本人の目から見た、その林業の世界を紹介したいと思います 

今回はやや硬めのテーマです。

少し頭を柔らかくしてお付き合いください。

私が元々自伐型林業を始めたいと思った理由は大きく3つありました。

  1. ただの作業員ではなく、経営者として森林経営に携われること
  2. 低投資で参入でき、一定の収入が見込めること
  3. 環境に配慮した施業方法であること

今回はこの中の①について検証し、自伐型林業の魅力を深堀りしたいと思います。

CONTENTS

森林経営についての疑問

まず、「森林経営」といっても初めから明確なビジョンを持っていた訳ではありません。

そもそも経営できる山もないのですから。

ただ、頭の中では、環境性と経済性のバランスを取りながら、長期的安定的な森林経営を目指したい、という漠然とした思いはありました。

私は、林業修行を始めて1年目の終わり頃から、山の管理を任せてもらえるようになります。

(その辺りの経緯は過去の記事をご覧ください)

【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ③ 山は買うべき?借りるべき?

そして2年目からは、

  • 山を調査し
  • 目標を設定し
  • 施業計画をたて
  • 補助金や伐採届等の必要な書類を作成・提出し
  • 施業をし
  • 収支を見て、施業内容を見直し、今後の計画を練る

全て一気通貫で、自ら事業計画を立案、実行するようになりました。

これは当初の希望通りの展開のはずです。いよいよ森林経営か?!

でも実際には、森林経営をしている感覚に乏しい、これが果たして森林経営なのか?という疑問が芽生え始めます。

「森林経営計画」の問題点

一方で、森林経営というと、森林組合などの林業事業体が数年単位でたてる事業計画で所謂「森林経営計画」というものがあります。

林野庁のホームページには以下の説明があります。

森林経営計画とは、「森林所有者」又は「森林の経営の委託を受けた者」が、自らが森林の経営を行う一体的なまとまりのある森林を対象として、森林の施業及び保護について作成する5年を1期とする計画です。

一体的なまとまりを持った森林において、計画に基づいた効率的な森林の施業と適切な森林の保護を通じて、森林の持つ多様な機能を十分に発揮させることを目的としています。

しかし、この制度もイマイチしっくりきません。

内容についての細かい議論は抜きにしても、一番の問題は、計画の対象期間があくまでも5年間に留まる点だと思っています。

もちろん、実際に運用する側からすると、何十年も先の詳細な計画など立てられないでしょうし、事業体としては何十年先よりも1年1年が勝負です。
その中で5年というのが現実的な期間として設定されたのだと思います。

それも理解はできます。

ただ一方で・・・

経営とは本来、PDCAという考え方に代表されるように、

Plan(計画)/Do(実行)/Check(評価)/Action(改善)

このサイクルを回していくことが基本だと思います。

しかし、木は100年、200年と生き続けます。

山づくりにおいては、結果が出るのが何年先になるか分からない。

もしかしたら、自分が生きている間に本当の結果は分からないかもしれない。

そうすると評価も出来ず、改善も出来ないということになります。

私が理想とする山づくりは、経営よりも、どちらかというと投資、もしくはアート作品を作ることに近いのかもしれない。

5年単位で完結するような「森林経営」とはちょっと違うと思っていました。

自伐型林業における森林経営とは

がしかし…

ここで樹木のライフサイクルに合わせて時間軸をグーッと伸ばしてみると、別の見え方になります。

山づくりは、これまでの林業の歴史の中でPDCAが繰り返されてきたとも言えるのではないか。

木を伐りすぎるとどうなるか、

道がないとどうなるか、

どのように道を入れたら良いか、

どういう方法で間伐したらいいか、

etc.

全て歴史の中で検証されてきたことであり、その結晶として、日本の風土に適した自伐(型)という持続可能な森林経営を実現する方法が生み出されたと言えるのではないか。

そう考えると、我々がやるべき森林経営とは、

  • 自伐型林業を継承し
  • その時々の社会状況、地域特性、技術の進歩に合わせて改善を加え
  • 次世代に継承していくこと

であり、短期的な利益を追うことではないはずです。

それはまた、自分が魅力に感じる山づくりの考え方とも符合します。

まさに「時代を越えた森林経営」とも言えるのでは。

まとめ

林業は不確実性の高い産業だと言われています。
それは、木は植えてから商品になるまで膨大な時間がかかり、その間に起こる市場環境の変化を予測することが難しいからです。

ただ、今の世の中、果たして確実性の高い産業はどれ程あるでしょうか?

歴史や自然に学び、林業の本質を追求することで、不確実なものを普遍的な価値に昇華させることも可能なのではないだろうか・・・

と、話がさらに抽象的になってきたので今回はこの辺りでやめておきます。

今回は壮大な思考実験にお付き合いいただき、ありがとうございます。

それではまた次の記事でお会いしましょう。

▶ 【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ⑩ なぜ高知へ移住、そして林業だったのか(前編)

【小さな林業の始め方】シリーズ一覧へ