小さな林業の始め方

【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ① 大切にしてきた2つの助言

Yasu
Yasu
こんにちは、ななみのオットのヤスと申します。46才で脱サラし、高知に移住して自伐型林業を5年間実践してきた本人の目から見た、自伐型林業の世界を紹介したいと思います 

今回は、私が自伐型林業修行をする上で大切にしてきた2つの助言を紹介します。

林業に関する名言は多いですが、中でもこの2つは自伐型林業の成否を分ける至言だと思っています。

「自伐型林業」とは、採算性と環境保全を両立する持続可能で小規模な森林経営のことで、委託を受けて他の所有者が持つ山を手入れ/管理する林業スタイルのことです。(詳細はNPO法人自伐型林業推進協議会のHPなどをご参照ください)
なお、「自伐林業」はよく似ていますが、まさに自分の所有する山を自分で施業することを指します。
私は自分の山を所有していないので、「自伐”型”林業」に携わっているということになります

林業に関する大切な助言 1.「一流の人に教わりなさい」

「一流の人に教わりなさい」

これは、NPO法人自伐型林業推進協議会(通称、自伐協)代表理事の中嶋健造さんがおっしゃった言葉です。

私が自伐型林業のことを知るきっかけとなったのは、この自伐協が主催するフォーラムで、その後も何かとお世話になっている協会です。

ただし、「・・・と言われても誰を頼ればいいんだか」と思ったのですが、自伐協の講師陣をはじめ、色々なつながりで出会う方々も素晴らしい実力を持つ方ばかりだったので、結果的に私は初めから一流の師匠にたくさん巡り合うことができました。

ともかく無我夢中でやってきたのですが、今振り返ると恐らく中嶋さんの言葉には”初心者こそ”一流の人に教わりなさい」という意味も含まれていたのではないかと思います。

そして、今、このことの大切さがとてもよくわかりますし、私はその意味で幸運だったと思います。

野球でもテニスでも、それこそお箸の持ち方でさえも、”初めに変なクセがつく”と後から修正するのは非常に大変です。

林業も同じだと思いました。

はじめに中途半端なレベルの教えを受けてしまうと、あとからより良い人の指導を受けても、軌道修正が難しいのです。
そればかりでなく、技術が中途半端だと安全性も確保されず、命にすら関わると感じました。

これから林業を始めようかな、という人の中には「いやいや、自分のようなド素人が、いきなり大御所のような人に教わるのは気が引ける・・・」と考えてしまう方もいるかもしれません。

実は私自身が、ちょっとそう感じたこともあったんですよね。

が、それは全くの杞憂でした。

一流の講師の方は、みな、驚くほど優しい。
というより、腰が低く、謙虚です。一言で言えば、紳士。

「初心者だから」「移住者だから」と、私をぞんざいに扱うような師匠に会ったことは一度もありません。
むしろ初対面から”林業を志してくれる若者(→相対的な若さですが・・・)”として大切にしてもらったような気すらします。

ある師匠は、国から何度も表彰されるような人ですが、どんな若い人に会っても、まず自分から帽子を取り、深々と挨拶をされます。
その姿は、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺そのものです。

つくづく、「技術だけ」では一流の林業家にはなれないのだと感じます。

皆さんも近年の大規模な自然災害を目の当たりにして、「自然の前の人間の無力さ」を感じる人は多いのではないでしょうか。一方で、私たちにあらゆる恵みを与えてくれるのも自然です。

常に自然と対峙する林業。
究めた人ほど謙虚になるものなのだろうかと、師匠の姿を前に感じざるを得ません。

初心者の段階で一流の師匠を通じて気づいたことは、単なる技術習得以上に私の財産になっていると感じています。

林業に関する大切な助言 2.「師匠は複数持つことがおすすめ」

「師匠は複数持つことがおすすめ」

これは林業修行を始めて間もない頃、とある地元の林業家の方に言われた言葉です。
”(自伐型林業に)失敗したくないなら”という前置きがありました。

もちろん、はじめから唯一無二の師匠に出会い、その人についていき成功したら、それも非常に素晴らしいことです。

ただ、やり始めてわかった重要なことがあります。

それは、林業を形作る要素は、無数にあるということ。

一言で「自伐型林業やってます」といっても、よく聞くと「樹種」「地質」「地域」と言った自然条件はもちろん、「事業形態(会社組織か家族経営か等)」「目標とする林型(森林のタイプ)」「自治体の援助」などの運営条件、さらに個人の「体力」「スキル」「家族状況」、はたまた「時代」「社会情勢」なども含め、数えきれない要素が組み合わさった異なる条件下で、それぞれが施業をしています。

誰一人として自分と同じ条件で林業をしている人はいません。

だから、たまたま1人の師匠と環境がほぼそっくり!というケースに出会うことは、そもそも確率的に非常に難しいのです。そして、他のやり方を全く知らなければ応用が効きません。

私のように、40代から林業に取り組んだ人間は、失敗している時間はありません。
成功の確率を高めるために、複数の師匠からエッセンスを吸収することが大切だというアドバイスは、素直に受け止めることにしました。

実際にやってみると、複数の師匠に師事するということは、まず何より「楽しい」ものだと気づきました。

みな一流の師匠ですが、モノの見方の深さ、そして引き出しの多さは、それぞれに異なる経験から醸成されたものです。だからこそ、常に新しい発見に満ちていました。
会うたびにワクワクして、必ず何かを得て帰れる。これほど楽しいことはないと思います。

また、相対比較というのは大事で、複数に師事したからこそ、それぞれのスタイルの輪郭や、優れた点がより明確に見えたのだと思います。
そのことで、師匠たちに感謝と尊敬の念が深まったことも事実です。

とはいえ、5年も過ぎますと、手法や信念により強く共感できる師匠がだんだんわかってきますので、絞り込んで学びを深めていく時期にも入ってきたかもしれません。

これまで出会ったすべての師匠からの教えが、これからのステージにも私を支えてくれるものと思います。

まとめ

情報が過多なこの時代、どんなことでもある程度独学で身につけることも可能になってきています。

だけど林業はなかなかそうはいきません。

林業の就業者は数が少ない上に高齢者が多いから情報発信が少ないのもあるだろうし、そもそも林業は体系化やマニュアル化が困難だからとも言えます。

原理原則は学べても、現場は教科書には載っていないような応用だらけ・・・
アナログで、経験的で、属人的な伝承が、まだまだ重要な世界です。

でも逆に、これからはこんな世界が新鮮で貴重なようにも感じませんか。

ではまた次の記事でお会いしましょう。

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