なぜ高知へ移住、そして林業だったのか、今回は前回に続いて、中編をお送りします。
CONTENTS
林業へ、きっかけは一冊の本
地方へ移住する方針はある程度固まりました。
では、どこへ?そして肝心の仕事はどうする?
私は地方に住むなら一次産業に携わりたいなぁと漠然と考えていました。
その中で徐々に林業に絞られていきます。
きっかけは地方移住を考え始めた頃に読んだ1冊の本です。
それは「里山資本主義」というベストセラーにもなった本で、移住に興味がある方の中には読んだ方も多いのではないでしょうか。
地方の価値を見直すことを提唱しており、その中心に森林資源があり、その生産を担う林業がありました。
実際に林業を始めてみるとこの本の内容に賛同出来ない部分も出てきましたが、地方の暮らし、そして林業に目を向けるきっかけとなった1冊であることは間違いないです。
この本をきっかけに林業について調べてみると、驚愕の事実を知ります。
なんと、日本は木材の大半 (約7割) を外国からの輸入に依存しているのです。
日本には木材として利用可能な木が多く生えているのに、様々な事情によりそれらの木が利用されず、林業が衰退しているとのこと。
これは何を意味するかというと、
知らない内に外国で行われる森林資源の搾取や環境破壊に加担しているかもしれないということであり、
輸送に膨大なエネルギーを消費していることであり、
日本の地方の産業を衰退させ、地方から人を離れさせている原因になっているかもしれないのです。
この問題解決に取り組むことは、社会的にも非常に意義のあることです。
林業の世界に入ることに、その可能性を見出しました。
地方移住の大きな目的にもなります。
そう、林業といっても、林業関係者には会ったこともなく、林業の世界に入るにはどうすれば良いか全く見当もつかないのですから。
そんな話を妻としていたら、ある日、
と、パソコン画面を見せてくれました。そこに表示されていたのは「自伐型林業」なるもののフォーラムの案内でした。
何?自伐型林業?よく分からないけど面白そうだね。とりあえず参加してみるか。と、軽い気持ちで夫婦でエントリーすることに。
それが運命の出会いになるとは、その時は全く想像もできませんでした。
運命の出会い
自伐型林業のフォーラム当日、参加者は30名くらいだったでしょうか。
壇上には、我々より少し年上とおぼしき男性が1人と若者が1人。
その2人が話し始めました。
それがNPO法人自伐型林業推進協会の代表理事である中嶋 健造さん(年上の方)と事務局長である上垣 喜寛さんとの最初の出会いでした。
中嶋さんの話には非常に引き込まれました。
- 自伐型林業は、素人でも参入可能?!
- それで生活できてる人もいる?!
- 関心を持つ若者が徐々に増えてる?!
- 環境保全にもなる?!
- 自らが森林経営者になれる?!
・・・もう、初めて聞く話ばかりです。
全て本当だとしたら、自伐型林業、すごく可能性があるんじゃないか⁈
直感的にそう思いました。
帰り道に妻とそのような話をしたことも覚えています。
ただ、私は、根が慎重な人間です。実際のところをもう少し確認したい。
ということで早速個人面談を申し込み、後日、中嶋さんと上垣さんにお会いし、もう少し詳しく伺うことになりました。
そこでさらに聞いた主な内容は、以下のようなものでした
- 自伐型林業が盛んになり始めた地域の筆頭は高知県
- 素人が自伐型林業に参入するなら、地域おこし協力隊に入るのが最も安全
- 最初から専業の自伐型林業家を目指すのではなく、何らかの副業をもって、兼業でスタートする方が安全
なるほど、高知県か。
であるならば、高知県で実際に自伐型林業を始めた人に話をお聞きしたい。
ということで、何名か紹介していただけることになりました。
高知への視察旅行
時は2015年の年末。
実はその年末年始に妻とスリランカ旅行を計画しており、往復の航空券も購入済でした。
というのも、移住の方針はある程度固まっていたものの、すぐにどうこうしなければならないという切迫感もなかったので、恒例のようになっていた年末年始の旅行を普通に計画していたのです。
ところが、自伐型林業のフォーラム後は気持ちがざわざわして海外旅行どころではなくなります。
そこでスリランカ行きをキャンセルし(その時のキャンセル料が数万円、痛い!)高知行きに急遽変更することにしました。
妻も快く受け入れてくれました。
その時高知に行って聞いた、何名かの自伐型林業の実践者の話をまとめると、
- 自伐型林業で上手くいっているのは山をもともと持っていたり、何らかの支援を受けている人だけ。実際はそんなに甘くない
- 特に、未経験で地縁もなければ相当難しい
- でも、自伐型林業は環境を守りながら、山から収入を得る方法としてすばらしい
- 一定の収入が保証されて、林業の様々な知識や技術の習得も支援してくれる地域おこし協力隊に入るのが一番安定している。直近でも募集しているから応募してみたら
おおまかにいうとこんな内容でした。
基本的には東京で聞いた話よりちょっと厳しめでしたが、より具体的に実態が見えてきました。
協力隊に入れば自治体の支援もあるし、そこで経験を詰めば独立して十分やっていけそうだ、との感触も得ました。
その時点では高知県内で林業をミッションとした地域おこし協力隊に応募することに、かなり気持ちが傾いていました。
逡巡、そして出した結論
がしかし、東京に帰ってからしばらくは苦悩の日々が続きます。
本当にオレは協力隊に入ることを望んでいるのだろうか・・・
オレが望んでいるのは新しいライフスタイルへの挑戦で、生活の安定は重要だが最優先ではなかったはず・・・
こんな風に逡巡する私の最終的な決め手になったのは妻の言葉でした。
「あなたが本当に望んだ道ならば、フリーランス (協力隊に入らない道) でも構わない」
そして出した結論が、
協力隊には入らずに兼業で自伐型林業を目指す、
そして移住先は、高知県四万十市に決定。
移住先としては、まず高知県内に絞りました。
自伐型林業が最も盛んな県だということは実践者も多く、自伐型林業に関する情報が集まりやすいと考えたからです。
フリーランスで始める以上、いかに情報を得るかが成否を分ける肝だと考えました。
その中で四万十市を選んだ理由は主に3つあります。
1つ目は、前回の訪問で環境を気に入ったこと。
海、山、川などのバラエティに富んだ自然環境がすばらしい。加えて、街の規模的にも生活に必要なものはなんでも揃っていそうな印象で、直感的に住みやすそうだな、と感じました。
ちなみにスーパーやホームセンター、ドラッグストアなどは本当にたくさんあります。
この点は、正直、東京より便利かもしれません。
2つ目は、フリーランスで林業を始める以上、なるべく自伐型林業の推進をミッションとした地域おこし協力隊と競合関係にならない場所が良いと思ったこと。
当時の四万十市にはそのような協力隊はありませんでした。
そして3つ目は、観光地でもあること。観光地であれば人の流れも多く、何かしらの副業も起こしやすいのでは、と考えました。
その結論を出した直後、再度、四万十市を訪れ、2日間かけて移住先の住居を決めました。
それは、フォーラムに参加してからわずか3ヵ月後のことでした。
次回、後編に続きます。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
▶ 【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ⑫ なぜ高知へ移住、そして林業だったのか(後編)