小さな林業の始め方

【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ④ 林業修行物語

Yasu
Yasu
こんにちは、ななみのオットのヤスと申します。46才で脱サラし、高知に移住して自伐型といわれる小さな林業を5年間実践してきた本人の目から見た、その林業の世界を紹介したいと思います 

ここまで、この連載では「林業に対する自分なりの考え方」のような話をしてきましたが、今回は「初心者がどのように自伐型林業の実践的な技術や知識を得てきたか」という、具体的なお話をしたいと思います。

林業を始めたばかりのころ、初心者研修で

自伐型林業の学び方の選択肢

初心者が自伐型林業の実践的な技術や知識を得ていく方法はいくつかあります。

最近のNPO法人自伐型林業推進協会(通称:自伐協)のホームページを見ると、「林業就業支援事業」として全国各地で自伐型林業に必須な知識や技術を学べる充実した研修が行われているようです。

もう一つ、地球のしごと大學」が主催する「自伐型林業学部というものもあって、ここでも自伐協と連携したプログラムで自伐型林業について学ぶことが出来ます。

前者は全国各地で行われているし、後者は首都圏からも通える場所なので、自伐型林業について学びたいけど最初から移住してまでは…という方に向いているでしょう。

一方、最初からガッツリ移住して、業として自伐型林業に取り組みたい、という方には、全国の自治体で広がりつつある、自伐型林業の推進をミッションとした地域おこし協力隊(以下:協力隊)に入る方法があります。

協力隊に入れば、自治体によって力の入れ方に濃淡はありますが、様々な恩恵が受けられます。知識なし、技術なし、コネなし、仕事なし、の初心者で移住者にとっては、最も安定感のある参入方法だといえるでしょう。

私が移住を決めた5年前は、「林業就業支援事業」地球のしごと大學の「自伐型林業学部」もまだありませんでした。

つまり力隊に入るか、どこにも所属せずにフリーで始めるか、のほぼ二択だったのです。

協力隊も全体に今ほど多くなかったのですが、移住先として最有力視していた高知県では2つの自治体で林業関連の協力隊員を募集していました。

私も協力隊に入ることは真っ先に検討しましたし、正直に言うと、入るかどうか相当迷いました。

先ほど二択と言いましたが、実際には、自伐協の関係者に聞いても、フリーの立場で移住(Iターン)して自伐型林業を始めた人の前例はないとのこと。

なおさら迷いました。

なぜ迷ったか、それはフリーで始めることへのこだわりです。
それまでずっと会社員として組織に属していたこともあり、移住後の第二の人生は独立して自分の力を試したいという気持ちが強くありました。

最終的には妻の賛同もあり、フリーで始める道を選びました。
まさに清水の舞台から飛び降りる気分。
知識なし、技術なし、コネなし、仕事なし、
ゼロからのスタートで林業修行が始まります。

しかし・・・何から始めれば良いか分からない。
あるのは不安だけ・・・

不安を払拭するには行動に移すしかありません。

その点、移住先に当時の高知県を選んだことが正解でした。

高知県で初心者が自伐型林業を始めるメリット

1.高知県立林業学校(現:林業大学校)

高知県は元々林業が盛んな県だったこともあり、県営の林業学校が全国に先駆けて開校していました。

何から始めたら良いか分からなかったときに、最初に頼ったのは「高知県立林業学校」。
現在は「林業大学校」と改称し、立派になっています。

(私が通ってた当時、まだ校長の隈さんはおられませんでした)

林業学校の設立主旨は森林組合や林業事業体への新規就業者の養成ですが、個人や小規模林業事業者向けの研修プログラムも非常に充実しています。

短期講座ならば、自分の受けたい講座、取りたい資格だけを選んで受講することもできます。フレキシブルで、かつ受講料も格安という、とてもありがたい存在でした。

自宅からは2時間半かかり、同じ高知県内でも結構遠いのですが、最初の1年は毎週のように通い詰めました。
本科生のための食堂や宿舎を利用させてもらったこともあり、運動部の合宿に行ったような、なんだか楽しい想い出です。

ここで私は小規模林業を行う上で必要な資格(チェンソー、ユンボなど)を全て取らせてもらいました。それでも大した費用はかかっていません。

移住者にも分け隔てなく学ぶ機会を与えてくれた林業学校がなければ、最初のステップからつまずいたかもしれません。今でも大変感謝しています。

2.自伐型林業実践者の現場研修が豊富

高知県は自伐協の代表理事である中嶋健造さんの地元でもあり、自伐型林業の実践者もその当時全国で最も多かったと思います。

そんな自伐型林業の先駆的実践者が、自身の現場に林業の講師を招いて行う現場研修が高知県各地で行われていました。

林業学校に通い始めて、最低限の知識と資格を身につけてから、
移住後に徐々に増え始めた林業仲間やその仲間を通じて知り合った実践者、などという具合に、人づてを頼りに、このタイプの研修に積極的に参加させてもらいました。


そこは現場で役立つ生きた知識や技術を学ぶのには最高の場所でしたし、講師や林業仲間との親睦も自然と深まっていきました。

何度か通えば、違う現場で同じ講師に会います。
熱心だと思ってもらえたのか、顔や名前も覚えて頂けて、後々自分の現場を持った時に講師として招くことにも繋がっていきました。
その中に、道作りや林業全般、そして人生そのものの師匠ともいえる人との出会いもありました。

3.高知県小規模林業推進協議会の存在

高知県には小規模林業推進協議会という画期的な組織があって、ここの会員になると(会費は無料)、小規模林業に関わる様々な支援を受けることができます。

前項で挙げた、「講師を現場に招く」という活動も、実はこの協会による支援のひとつで、指導料等が補助されています。

他に、作業道の開設、林業機械レンタル、傷害保険加入など、自伐型林業に参入する上で必須となる費用を補助してもらえる、非常にありがたい制度です。

林業の修行時は、支出が増える一方で、収入につながらない時期が続きます。こういう制度で補助して頂けることは、何より精神的にとても助けられました。

ちなみに林業学校や現場での研修の内容は様々ですが、自伐型林業の現場に出てみて一番重要だと感じる技術は、やはりチェンソーワークと道作りです。

最低この2つは、この連載の最初にもお伝えしたように、一流の人に教わることをお勧めします。

ある程度研修を行き尽くしたら、今度は研修で知り合った人の現場にお邪魔し、お手伝いしながら、実践経験を積ませてもらいました。

こうして手探りながらも少しずつ、知識と経験を重ねていったのですが、それぞれの研修や現場で学んだことはまだ点と点の状態でした。

それが移住1年目の終わり頃に初めて自分の現場を持ったことで、積み重ねてきた点と点が線で結ばれ、やがて全てがつながり面となり、なんとか1人でスタートを切ることが出来たのです。

様々な研修や現場に受け入れて下さり、全くのド素人にも親切に教えて下さった皆さんには本当に感謝しています。

修行を乗り切れた2つの内的要因

この最初の修行期間を上手く乗り切ることが出来た要因を振り返ってみると、高知県を外的要因とすると、他に2つの内的要因があります。

.当面の間の生活費の余裕

1つは、会社員時代の貯えが多少あったので、直近の生活の心配をすることなく、修行に専念出来たこと。

修行しているときは、お手伝いがアルバイトになるときもありましたが、ほとんど無収入に近い状態。貯金は重要でした。

明日の生活の心配をしながらだと、修行に集中出来なかったと思います。

2.妻の参加

2つめは、(これは私からそう頼んだ訳ではなく、好奇心旺盛な妻が自ら希望してのことなのですが)林業学校の研修や現場のお手伝いに、妻がほぼ一緒に参加してくれたことです。

妻が一緒だったことで、夫婦で1つのチームとしてこの難題に取り組めたこと。

そしてまた、林業の世界における人脈形成においても大いに助けとなりました。

まだまだ男性社会の林業の研修に女性、しかも夫婦で参加というのが珍しいせいか、講師、研修主催者、参加者から何かと気にかけてもらい、おかげで林業関係の知人が次々に増えていきました。

私はどちらかというと人見知りするほうで、新しい環境に馴染むのに時間がかかるだけに、妻の存在がその垣根を一気に取りはらってくれた感じです。

このとき出来た人脈はその後の林業人生や移住生活を豊かにし、今でも私の財産になっています。

まとめ

結果的に見ると、協力隊などの組織に属さず、フリーの立場で林業修行を始めたことが私の気質には合っていたのだと思います。

私の今があるのは、妻の協力、人々との良き出会い、偶然、運、様々な要因が重なってのこと。同じことをまた出来るとは限りませんし、新たに始めようとする人に奨められるものでもありません
冒頭でもお伝えしたように、今は他にも自伐型林業を始める方法はいくつかあることですし。

ただ、私の修行を支えた秘訣をあえて言うなら、「自伐型林業でやっていく」というシンプルな軸がブレなかったこと、そして「NO RISK、NO FUN」の信条のみ。

困難な道を選択したからこそ応援してくれる人も多く、得るものも多かったかもしれません。私もいずれ応援する側に回れるよう、精進していきます。

それではまた次の記事でお会いしましょう。

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