50年以上生きてきましたが、こんな年始はおそらく初めてだと思います。
元日からの地震、それを助けに行こうとしていた海保の人々の殉職、炎上するJALの飛行機。
わたしは何となくだけど、元日っていうのは大きな災害が起こらないような気がしていました。とある年に何か起こるにしても、365分の1の確率で、よりによって元日はないだろう、という根拠のない考え。
この甘さに、自分で自分を嗤いたくなりますが。
北陸は、輪島の朝市通り周辺が焼失してしまった映像だけでも十分な悪夢なのに、まだ見えていないところのほうがむしろたくさんあるのでしょう。
何といってもここ高知県こそ、次に大地震が来そうな場所の筆頭といってもいいくらい、リスクが高いところと言われている。どうしても、あの街並みとこの街並みを重ねて見てしまう。
さらに、被災地を助けるために飛び立とうとしていた海保の方々が死傷されたことに至っては、何という言葉をついでいいのかわかりません。
きっと急に招集され、お正月返上で、ただ困っている人を助けようと、それだけの想いだったはずなのに。
そんな中で、少なくとも、JALの乗客、乗員の皆さんが全員助かったのは本当に良かった。JALもANAも同じくらい乗るけれど、どちらもいつも日本の誇りとも言えるほど、素晴らしいエアラインだと思います。
2023年は高知⇔東京を飛行機で何往復かしたのだけれど、その中で一番印象に残ったのは、JALのCAさんのある行動でした。
東京から高知へ戻るJAL便。
わたしの斜め前ほどに、ご高齢で足どりのおぼつかないご婦人がおられました。
その方がお手洗いに立つときに、さっと手を貸したのはベテランと見受けられるCAさん。
そこまでは普通かもしれないけど、何となく見ていると、手を借りてもご婦人は揺れる機内で歩くのがなお難しく、左右の座席にガンガンぶつかりながら進んでしまっている。
あっ、危ないな…
ご婦人はもちろんのこと、他の乗客にとっても。
と思っていると、手を貸していたCAさんが、すかさずご婦人の前に回りました。
え?と思っていると、次の瞬間、ご婦人の両手をさっと取るや、CAさんは自分の腰にガシッとつかまらせた。
この間、たぶん、1,2秒。
そしてなんと、やおら「ムカデ競走」のように縦に並んで歩き始めました。
CAさんって、髪型から制服の着こなし、お化粧まで完璧で、美の極致みたいなイメージ。
それが、スマートさやオシャレさを一切無視し「乗客の安全」を最優先して、ガシガシと歩き方まで安定したガニ股歩きにして、力強く誘導している。
マニュアルにあるかどうかはわかりませんが、なにかズシンと来るものを感じずにはいられませんでした。
この出来事と、今回の事故ではあまりにスケールが違うので並列にはできないものの、一方で、一事が万事とも言うし。
JALの乗務員さんたちが、困難の中で冷静に乗客を誘導したであろうことは、あまり不思議には思いません。
助かって良かったね、ラッキー、じゃない。
「奇跡的」と言われる救出を引き出したのは、ふだんの意識や訓練の賜物以外の何物でもない。
震災、事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
厳しい年始ですね。
毎年、明るく元日を迎えられることは当たり前ではないのだなと思います。