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出会いはセレンディピティ
なぜか発端はハワイ島。
同じ宿に泊まっていた世界一周の旅人、トオルさんと夫と3人でキッチンで話をしていたときのこと。
わたしたちが林業に関心があって高知に移住したというと、
林業やってるんだったら、ぼくの友だちにもオモシロい人がいるんだよ。
と、トオルさん。
聞けば、
「東京の八王子で、皮むき間伐っていうのやってるんだ。ぼくもワークショップに参加したことあるけど、参加者で手をつないで輪になって、木がこの大きさになった森の未来を想像したりして、とても素晴らしい体験だった」
と。
皮むき間伐。なんとなく聞いたことはあったけど、東京でそんなことやっている人がいるとは初耳。
それに、オモシロいトオルさんがオモシロいっていうんだから、絶対オモシロいんだろうなぁとぼんやり考えて、その場は解散。
「森と踊る」を知る、押しかける
あとから調べてみると、オモシロい人は森と踊る株式会社の代表で、こんな人でした。
三木 一弥(ずーやん)
森と踊る株式会社 代表取締役(森と遊ぶきこり)
1969年奈良県生まれ、兵庫県とインド育ち。子供の頃から、遊園地より動物園、屋内より屋外へと大自然に惹かれる。横浜国立大学大学院工学修了後、株式会社クボタに入社。浄水、下水などの水処理のエンジニアを経て、組織改革、新規事業立上げを経験。2013年末、突如きこりになることを決意し、退職。2016年2月、「美しい自然がどこまでも広がっている。そこで人々が笑顔で分かち合っている。モノやコトも分かち合っている。自然と人も分かち合っている」という100年後の未来を実現するために「森と踊る株式会社」を設立。
うーん、一部上場企業に勤めていていきなり木こり・・・。相当ヘンな人っぽい(期待)
しかも2013年に退職されて、5年後の現在、すでに森林再生・管理・間伐施業、木製品の製材・加工・生産・販売、リフォーム、森の可能性を感じてもらうイベント企画、運営、コンサルタントetc
取り組みが幅広い!
いつか会ってみたいよね、と夫と話しながらふと考えてみると、「森と踊る」の拠点は、東京の八王子。
八王子といえば夫の実家で、ハワイから帰国したらそのまま少し滞在する予定がある。
こういうの、いわゆるセレンディピティの一種だと思っています。
そしてわたしはこういうのが大好き。
セレンディピティ(デジタル大辞泉より)※
求めずして思わぬ発見をする能力。
思いがけないものの発見。運よく発見したもの。偶然の発見。
※ 造語なので、解釈や定義はいろいろあります。
夫も同じように感じたみたいで、いきなりだけど早速三木さんに連絡。
すると、素早いレスポンスをくださって、あっという間に訪問する日程が決まりました。
東京の外れに、超広大な山地が広がる
お約束した日。
ちょっとご挨拶程度かと思っていたら、なんと山まで案内してくれるというので、三木さんが預かる、高尾駅のほど近くにある現場へ。
何をしていたのか、すでにまぁまぁ汚れた感じで、三木さん登場。
施業している山は?と尋ねると
「あのへんからあのへんに、ずーーーーーっと、続く感じで・・・」
ずーっと、ずーっと向こうまで。。。
預かる面積はなんと数百ヘクタール。(・∀・;)
「10回生まれ変わっても整備しきれないくらいの広さ」
なんだそうです。
もちろんこれだけの場所を任されるには大変な道のりがあったようですが、それにしてもその信用の高さにビックリ。
改めて見ると、東京ってすごい山地なんだぁ・・・。
高知と言われても信じる風景
そして、三木さんや仲間たちが懸命につけた道に入って行きます
高知県は小規模林業への補助がいろいろありますが、東京には「花粉対策としての林業」以外には、補助はほとんどないらしい。
この道も、手作業でつけはじめ(!!!)、それから知人のユンボを借りたりしてなんとかつけた、とのこと。
きれいな道ですね。
途中、皮むきされたセクシーな(?)木がちらほら。
1-2年、この状態で乾燥させるのだそう。
すると重量は皮むき前の約半分に。
皮むき間伐の場合、残すほうの木にしるしをつけます。
途中には、作業した木材がきちんと束ねられています。
森を丁寧に扱う人かどうか。こういう作業にはすごく人柄が出ると思うのです。
わたしは作業がおおざっぱなので、こういうのを見るといつも反省する・・・
途中、話しながら三木さんが
「えっ 脱サラして林業?高知へ?夫婦で?んー・・・いやー、変わってんねぇ。よくやるわ」
いやいやいや
(▲ ヘンな人同士 ▲)
それから「アジト」と呼ばれるご自宅兼作業場のような場所へ連れて行っていただき、色んなお話をしました。
「林業でなくてもいい」
三木さんのお話で印象に残ったのは、
「もう”林業”でなくてもいいんじゃないかと思って」
という言葉。
もちろん「間伐」とか「道つけ」とか、いわゆる”林業”のこともやっていますが、三木さんの視座は
森をフィールドに、人と人の輪をつなぐ活動がしたい
という点。
三木さんいわく、
「森業(もりぎょう)でいいと思う」
とも。
間伐はその木を売るためではなく、「森林再生」という付加価値が前提の必要な作業であると。
そこから利益を上げることが先ではない。
間伐された木は、材木市場ではなく、その木そのものを必要とし、価値を感じてくれるエンドユーザーに直接売る。
実はこれが一番いいんじゃないかとみんな思い始めているけれど、一番難しいところ。
そのあたりは「森と踊る」のセンスなんですね。
わたし個人としては、そういうStoryに価値を感じるひとの多い、東京という場所のメリットなんだろうなと感じました。
人と人との輪、とかコミュニティづくりみたいな話になると、ふんわりした非営利の活動のように思われがちですが、しっかりビジネス化しているところがすごく参考になる。
一緒に話していた中心メンバーの「なこ」さんは、都心で勤めながら週末にこの事業に参加。東京にいながらにしても、山や森にガッツリ関わることはできると体現している方です。
なこさんいわく
「皮むきした木は、2メートルくらいならわたしもひょいって担げるんですよ~」
つまりお年寄りでも子どもでも、ずいぶん森や木材が身近になるということ。
原木や木材を触ったことがあるかどうかって、シンプルなことですが、意外にその人の山や森を見る目をグッと変えさせたりするんですよね。
話を聞いていると、まさに「森と踊る」。
林業といえば、きつい・汚い・危険、そして斜陽産業、という話とは全然違う森との関わりが見えてきました。
まとめ:アタマをマッサージされた心地よさ
三木さんと仲間の話を聞いていると、自分が固定観念にとらわれがちだったんだなぁということに気づかされました。
林業はこうでなければ、山はこうしなければ、山主や地域とはこう関わらねば。
そんな枠にとらわれない話で、アタマをマッサージされた気分。
森ともう少し遊んだらいいんじゃないか
もちろん、ふと我に返ると、「って、何からしたらいいんだか」とまた急にわからなくなって焦る気持ちも。
ただ、場所が異なり、アプローチが異なり、持てる能力が異なっても、なんとなく「森っていいよね」という点が共鳴できる仲間がいると感じるのはとても心強いし、何より楽しい。まずは、それだけでもいいと思う。
また、「山や森に興味があるけど、移住まではちょっと・・・」と思っている都会のあなたに、こうした活動は東京でもできる!ということを知ってもらいたいと思います。
∇ 今日のデスクからの風景 ∇