読書

喰わず嫌いの後悔ー梨木香歩さんのすすめ

つい最近読了した、この本。

たぶん皆さんよくご存じの。「てか今さら?」と言われそうな・・・
なんてったって、出版が1994年ですからね。

当時からとても評判の作品だったので、「いつか読もう」と思いながら30年近く経った(!!!)

当時、なぜすぐ読まなかったかというと、この「魔女」の響きがメルヘンチックだし、「梨木香歩」という名前がアイドル歌手のように妙に可愛らしい。

だから、

「そんなフワフワしたコの書いた、フワフワしたもん読んでられっか」

みたいな気分だったんです。思い込みって怖い。

そこからあっという間に四半世紀以上が過ぎて、相変わらず梨木香歩さんは活躍されているので気にはなるものの、飛び損ねた大きな縄跳びは途中から入るのが難しいように、わたしも「梨木ワールド」にどこから入っていいか、途方に暮れていました。

ところがそんなある日。
たまたま古書店で見つけ、珍しく”ジャケット買い”した本があったんですが

この本の翻訳者が偶然、梨木香歩さんでした。

翻訳もされていることは知らなかったので、家に帰ってからびっくり。

あちらから飛び込んできてくれたようで、これは縁だなぁと。

ちなみに「ある小さなスズメの記録」は、本当に「ある婦人とスズメの12年間の交流」を淡々と描いた作品で、誇り高いスズメという知られざる動物の一面を見られるとともに、こんな風に心優しい人間でありたいなと思うことのできる佳作なのでこれはこれでぜひおすすめしたいところ(イギリスで大ベストセラーらしい)。

シンプルシックな梨木さんの翻訳の文体も、英国文学に合っているような気がしました。

その次の出会いは、わたしとオットが大好きな香川県の個人書店、ルヌガンガにて。

これも目に飛び込んできた、ある意味ジャケ買い(結構あるな?)でした。

ルヌガンガについてはこちらも見てみてくださいね。

本屋ルヌガンガのこと【香川・高松情報】

植物と、宗教に造詣の深い梨木さんの文章は、やや哲学的に感じられるところがあります。(注:特定の宗教には帰依しておらず、学術として宗教を学ばれていたとのこと)
しかしそれを、なるべく簡体に書こうとされている(ような気がする)。

この、目線が低すぎず、高すぎずというところが、わたしには心地よく感じます。
ま、ときどきわからない箇所もあるんですが。

ただゆるく面白いことを書かれてもわざわざお金を出して買った甲斐がないし、かといって、深遠過ぎてついていけないのもツライ。

読者に気づきを与えてくれる、でも置いてきぼりにはしない。
つまり年上の知的なお姉さんとお話しているような感じです。

このあたりまで来ると、

「あぁ~梨木さんごめんなさい、名前だけでポッと出のアイドル(?)みたいに思っちゃって、四半世紀も放置して本当にすみません」

という感じで、梨木さんのいそうな方向(どこ)に頭を下げたくなりました。

そんなこんなで、満を持して(?)読んだ、梨木さんのデビュー作にして大ヒット作。

主人公は、学校で問題を抱えてしまった、でも素直な女の子。
そして、自然の中でひとり暮らすターシャ・テューダーみたいなイギリス人の祖母。
自然たっぷりの情景の中で二人が暮らす様子が、とても清々しいです。

後から知ったのですが、小中学生の課題図書にもなっていたらしい。

そういうわけで、当然、難しさはゼロ。
でもかと言って、つるんと表面的というわけでもないんです。

メルヘンでもファンタジーでもなく、あんまり言うとつまらないのでぜひ実際に読んでほしいのですが、「シンプルに、人生でもっとも大切なことを伝える」という感じでしょうか。

押しつけがましいところも、自己啓発っぽいところもないのに、なんとなく深いところにズーンと来る感じ。

これは、わたしが最近ハマっている「鍼」に似ている(突然の飛躍)。

ともあれ、小中学生のころに、完全に理解はできなくても、これを読んでおくというのはとても良いことだと思います。深いところに刺さるから。
そして50歳には50歳なりに感じるところもあるので、何歳になってから読んでも良いのではないかと。

体感として、好きな作家が1人増える(しかも存命の)ということは、10人の友人が増えるくらいに等しい価値があるように感じます。

50歳にして、ラッキーですが、あぁもっと早く知れば良かった!!