小さな林業の始め方

【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ⑧自伐型林業は儲かるの?

yasu
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こんにちは、ななみのオットのヤスと申します。46才で脱サラし、高知に移住して自伐型といわれる小さな林業を5年間実践してきた本人の目から見た、その林業の世界を紹介したいと思います 

「自伐型林業は儲かるのか」

これはおそらく、自伐型林業を始める際に誰もが最も気になるテーマの1つではないかと思います。

私自身も、自伐型林業に参入する際に、それが収入になるかどうかは大変気になっていましたし、経済性の追求は永遠のテーマでもあります。

ただ、この世界に入って内実を知ると、自伐型林業については、単純に儲かる、儲からないという尺度で議論することに違和感を持つようになりました。

そのため、重要なテーマにも関わらずこれまで書くのをためらっていました。
しかしずっと避けて通ることもできません。

今回は思い切って取り上げることにします。

CONTENTS

「自伐型林業は、儲かる」という説について

まず、

「自伐型林業は、儲かる」

そういう説もあります。

実際に地方に移住し、自伐型林業を始めて4〜5年で、林業収入だけで年収400〜500万円の方はいますし、それが成功事例として取り上げられたりもします。

これだけの年収を林業だけで得られれば、実践している立場からすると「すごい!」と思うし、生活コストの安い田舎で暮らすにも十分です。

「自伐型林業の成功例」を見る際の注意点

ただ、「自伐型林業の成功例」の情報の見方には、注意すべき点が2つあります。
これは、実際に林業に携わってみないと、なかなかわかりにくい点です。

1.補助金込みの年収であることが多い

林業は、国や県、市町村から補助金が得られることも多く、「林業年収」と称するときに、実は大半が補助金だった、ということもよくあります。

私は補助金=悪だとは思っていません。
正しく使えば善だと思いますし、ここでは補助金そのものの是非を問いたい訳でもありません。

私がここで言いたいのは、これだけの補助金を個人に交付出来るのは、居住地の自治体が、自伐型林業の推進に相当な力を入れていることの裏返しだ、という点です。

ほぼ同じ条件で同じ作業をしても、居住地の自治体から交付される補助金が全く違うケースはよくあります。

2.施業地の確保が重要

年収が補助金を含むにせよ、含まないにせよ、これだけの年収をコンスタントに得るには、相当広い施業地(=山)を確保する必要があります。

元々の山主ならいざ知らず、移住者が広い施業地を確保するのは大変です。
ここでも、自治体が施業地を確保して紹介してくれるなど、行政の強力なバックアップが入っていることが推測されます。

こうして見てみると、補助金にしても施業地にしても、成功事例の背景には「行政の強力なバックアップ体制があれば」という注釈付きだということが分かります。

3.本人の能力と熱意も重要

もちろん、これだけの収入を得るには、そうした「行政のバックアップ」だけでも不可能です。

成功例のご本人は、相当の仕事を質量ともにこなされているはずで、立派だと思いますし、おそらく私にはできません。

ただ、これから自伐型林業に参入しようとする人が、こうした成功事例の表面だけを見て、「最初からこれくらい稼げるんだな」と期待してしまうと、現実はもっと厳しいと感じることになると思います。

「自伐型林業」が儲かるかどうかは考え方と工夫次第

では、「自伐型林業は実際は儲からないの?」と問われたら、一概にそうともいえません。

要は考え方と工夫次第です。

複業の1つと考えれば、自伐型林業は充分収入の足しになるし、工夫次第では、補助金に多くを頼らなくても収入を得る道はあると思います。

複業スタイルの我が家の例

わが家を例にとってみると、現在の収入割合はこのような感じになっています。

こうして見ると収入のメインは兼業でやっているカフェ経営で、林業の割合は少ないように見えるかもしれません。

しかし、そのカフェの売上の約半分はコーヒーから来ていおり、そのコーヒーは、林業の副産物として取れた薪を使って自家焙煎しています。

さらに、カフェスペース自体も、山仕事の繋がりでお借り出来ています。

薪を採るところから始まる石窯自家焙煎。SLOW COFFEEを試しませんか?こんにちは、ななみです。 うちのカフェでは、豆を石窯で自家焙煎し、オットがコーヒーを抽出しています。 薪を燃やして石窯の中で焙煎...

こう考えると、どこまでが林業収入か?という境界も曖昧ですよね。

そうした林業を通じた広がりや創意工夫もまた、地域密着型である自伐型林業の醍醐味であり、面白さなのだと思うのです

材価が安いことは理由にならない

自伐型林業が儲からない理由を、「安い材価のせい」とすることも良くある議論です。

確かに、昔に比べれば相対的に木材価格は安いと思います。

でも逆に考えると、もし木材価格が高かったら、どうなるでしょうか。

当然そこには大手資本も続々と参入してくるでしょうし、我々のような個人で、しかも素人が林業に参入できる余地などなかったでしょう。

また「お金になるから」と皆伐や強度間伐が繰り返され、日本は今ごろ、すでにハゲ山だらけになっていたかもしれません。

材価が安いからこそ、我々のような新規参入者にもチャンスが生まれたのです。

私の尊敬する師匠は、「何事にも光と陰がある」とよくおっしゃいます。


林業界にある種の陰があったからこそ、自伐型林業に光が差したともいえます。

つまり、時流に惑わされず、現状の中で出来る最良の道を選びなさい、ということなのではないかと思うのです。

まとめ

このように、自伐型林業は一概に「儲かる」とも「儲からない」ともいえないですが、それでもあえて結論を出すとしたら、

自伐型林業は

  • 手軽に収入を得る手段とは言い難いが
  • やり方と条件次第では、長期安定的に収入を得られる可能性があり
  • 地域とのつながり、やりがい、森林の癒し効果、等々、 金額に換算できない多くの価値をもたらす

というのが現時点での私の考えです。

それではまた次の記事でお会いしましょう。

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