突然ですが、
と言われたら、そのあと何と続けますか?
と言ってしまったら、
まぁまぁ年寄りです(きっぱり)。
ピーター・メイル著 「南仏プロヴァンスの12か月」は、1980年代の終わりに出版され、世界的大ベストセラーとなったエッセイ。
ロンドンに在住していた広告マンだったピーター・メイル。
とあるベストセラーを出版したことを機に(印税生活に入り?)、都会の生活に別れを告げ、妻とともに恋焦がれた南仏プロヴァンスに移住しました。
「南仏プロヴァンスの12か月」は、彼らのそのあとの生活を描いたものです。
元祖セミリタイア&移住エッセイの1つですね。
彼らが重苦しいと感じていたロンドンとは真逆の、明るく清々しい気候。
豊富な食材をふんだんに使用した、それでいて驚くほど格安の美食の数々。
さらに明るく愉快な隣人たちと、素晴らしい風景。
世界中の人が魅了され、プロヴァンスブームが起こったとて、何の不思議もありません。
もちろん、メイル夫妻のプロヴァンス生活も、良いことばかりではないです。
やたらに書類ばかり要求されるフランスの行政。
マイペースのフランス人の職人と、進まない工事。
休みになると押しかけてくる「自称」友人たち。
春から秋とは打って変わって厳しい冬の一面…
プラスもマイナスもあるけれど、良いことはビビッドに、良くないことはコミカルに描かれ、読後感が極めてさわやかであるところが、この本が広く受け入れられた要因だと思います。
わたしがこの本を読んだのは大学生の時。
とにかく表紙が綺麗だな、南仏ってかっこいいな(浅い…)、と思って買っただけでした。
それでも、本を読んで、いつかはピーター・メイルの住んだ「メネルブ」とかいう村に行ってみたいとぼんやり思っていたのですが、調べては諦めることが続きました。
アクセスが悪すぎるからです。
まずはパリとプロヴァンスの位置関係を(雑に)示すとこんな感じ。
南仏プロヴァンスと呼ばれる地方には、エクスアンプロヴァンス、マルセイユ、アヴィニヨンなどの大都市もあり、それらに行くのは難しくありません。
しかし、メネルブをはじめとした小さな村々は、公共交通機関はないので、こうした大都市を起点にレンタカーを借りるか、タクシーで行くしかないのです。
さすがにフランス、しかも田舎道を運転するなんて難しいよなぁ、とずっと思っていたのですが、2018年にアメリカをドライブしたことで経験値を高めた(?)オットが
とサラリと言ってくれて実現したわけです。
ちなみに、フランスには【フランスの最も美しい村(Les plus Beaux Village de France)】と認定されている村が点在しています。
2023年7月3日現在、認定されている村は174か所。
メネルブが属するエリアは「リュベロン地方」と言い、この”美しい村”が多数あることでも知られています。
なので、ピーター・メイルを追いかけつつ、ついでにリュベロンの他の美しい村も訪ねてみようというのが今回の旅行の1つの目的でした。
こんな、いかにも積年の思い入れがあった一方で、実は行く前から、
という妙に冷めた気持ちもありました。
何せ、本で読んだのは30年前でしょ。
きっと商業化されて雰囲気も変わっているだろうし。
そもそも「名物に美味いものなし」って言うしな。
「美しい村」なんて自分で言っちゃう村なんて、きっと不自然に作りこんだ感じがあるに違いない…
ずいぶんひねくれた感じですが、まぁちょっと斜に構えて出かけたわけです。
わたしたちが出かけたリュベロンの村は以下の通り。
- ルールマラン
- ヴナスク
- ルシヨン
- ゴルド
- メネルブ
- カヴァイヨン
特に最初の村、ルールマランについたときは、本当に驚きました。
というアホみたいな感想を思わず口に出しましたよね。
そこから次々美しい村が繰り出されるわけですが、はっきり言ってどの村も本当に美しい(語彙!!)。
もちろん土産物屋なども多く、商業化している面はありますが、そもそもそのセンスが良い。
雰囲気を壊すことなく、ごく普通にそこに村人が住んでいる感じが全く崩れません。
いちいち、綺麗だな!!
古い建物はそのまま生かし、修復するときにも周囲との調和を絶対崩さない。
新しいものと古いものをミックスする加減が、やはりフランスは抜群…
村から村を渡り歩くにつれ、当初の斜に構えた気持ちはあっという間に消え去り、「すごい、きれい、ヤバい」という女子高生レベルの感想をブツブツ唱えていました。
作りこんだ風がないのに、完成度高すぎ。
↑実はこの村(ラコスト)は「美しい村認定」はされていないただの近隣の村。
ものすごい素敵でビックリ。
さて、本命の「メネルブ」村ですが、ピーター・メイル効果で経済が潤ったのか(?)、こうした村々の中では突出してセレブ感がありました。
でも不思議と、そんなイヤな感じはしませんでした。
こんな風に、褪せた感じもちゃんと残してるからかな?
そんなわけで、30年想い続けた”南仏プロヴァンスの美しい村”は、「とか言って、それほどでもないんでしょ」というわたしのひねくれた予想を大きく裏切り、
という、非常にシンプルな結論になりました。
何事も、自分の目で確かめないとわからんのですね。
「いつか行ってみたいなぁ」で終わらせなくて、本当に良かったと思います。
ちなみに、この「美しい村」は、フランス人にとっても大人気の観光地。
土日に当たると、ものすごい混雑してしまい、正直かなり印象が変わってしまいます。
オフシーズン、または、せめて平日に行くことを強くお勧めします。
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さて、ピーター・メイル氏の後日談。
「南仏プロヴァンスの12か月」があまりに売れてしまったため、世界中から”聖地巡礼”を求める観光客が押し寄せて、リュベロン(特にメネルブ)は大混乱に陥ったそうです。
結果、ピーター・メイル夫妻はせっかく買った家に居づらくなり、転居していったとか…
今なら、なんかその状況がよくわかるなぁ。
うーん、他人事だけどなんか悲しい。
移住(のメリット・デメリット)は、今も昔も、そして古今東西、大して変わらんというのが驚きです。