こんにちは、nanami*です。
今日は、「高知県に移住し、そして挫折を経験した」2組のご夫婦の話を聴くという、なかなか攻めている企画の会に参加しました。
これ、本当にタメになる話でした。
わたしたち移住者にとっても、これから移住しようとする人にとっても、とても参考になる話だと思います。
CONTENTS
A夫妻の場合
A夫妻はIターンで高知県にやってきました。状況はこんな感じです。
個人を特定されたくないので、詳細は伏せますね。
A夫妻の概況
- 高知県のある村にIターンし、農業を志す
- 2年間の研修期間(国の給付金あり)を終了
- 独立の際は、自治体から希望する場所の農場を譲ってもらえるはずだった
- ところが、いざ独立という段になって、自治体から「好条件の農場は渡せない」と言われる
- そして当初の話とは違った、条件の悪い農場の提供を提案される
- 納得できずに膠着状態
概況から見る、A夫妻のトラブルポイント
A夫妻については、トラブルのポイントは2つあると感じました。
- 自治体側との約束が、口約束レベルであとからカンタンにひっくり返された
- A夫妻側は、自治体以外の交渉経路を持たなかった(たとえば地域の有力者など)
「約束」を信じすぎた
もちろん自治体側にも言い分があると思いますが、ともかく「当初の約束が果たされなかった」ことは事実のようです。
信じすぎたA夫妻が悪い、というのはあまりに気の毒です。なんといっても相手が自治体ですから、ふつう信じますよね。
ですが「前の担当者が決めたことは、ワシは知らん」みたいなことで流されてしまったのも事実。このあたりは、”都会の常識がどこでも通じるわけではない”という認識を持たざるを得ないのかもしれません。
交渉経路を1つしか持たなかった
地方では「人的なつながり」が一番モノを言う、ということがあります。
たとえば、この件なら〇〇議員さんに口を利いてもらえば、どうとでもなるみたいな・・・
A夫妻は、そうしたことは知っていたけれど、
と言っていました。
色んなコネや根回しを使いまわせるような、そんな「清濁併せ呑む」老練な人でなければ移住ができない、受けられるべき援助が受けられない、なんておかしな話ですよね。
そしてそれを「ありき」とすることから腐敗が始まる。本当にその通りです。
A夫妻の言うことは、しごく正論です。
なのに、正論を通す人の正当な希望が通らない・・・
A夫妻が間違っていたわけではありません。ただ、現実はこの通りでした。
A夫妻の今後
現在の村にこのままとどまるか、出て行って別の地域で農場を探すかを検討中。
いろいろあったものの、村ではいろんな人にお世話になったし、今でも村のことはとても好き、だそうです。
B夫妻の場合
B夫妻の概況
Iターンで就農希望という点ではA夫妻と同じです。
- 高知県のある市にIターンし、農業を志す
- 2年間は地元の農業関係の企業で働く
- 独立の際は、就農給付金を受けるつもりだった
- しかしいざその段になって、給付金の条件を自分たちが満たしていないことを知った。自治体からも詳しい説明がなかった
- 仕方なく少ない自己資金で農業を始めたものの、生活に行き詰まる
- いったん都会に戻ったあとで、違う地方に移住し、新たに就農を目指している
概況から見る、B夫妻のトラブルポイント
これも2つあると感じました。
- 自治体がすべてリードしてくれることを期待していた(給付申請など)
- 途中で困ったときに、相談すべき相手がいなかった
自治体に期待しすぎた
B夫妻は、自治体を過信し、自治体の言うことを聞いていれば安心、といった感覚であったように見受けました。
実際には自治体の担当者との意思疎通がうまくいかず助言が受けられなかったり、と、特に役所関係で一番大事な「事務手続き」でつまづいたのが、致命傷になった印象です。
相談相手がいなかった
夫妻ともに「人付き合いが苦手なほう」なのだそうです。
しかも、20代前半というとても若いときに移住したこともあって、
と自覚していました。
自治体とのコミュニケーションがうまくいかないときも、相談すべき相手が見つからず、2人でウツウツとした状況に陥るだけだったと。
ただ・・・20代前半なんて、何もわからなくて当たり前です。
だからこそ、こんな貴重な人材を誰かが守ってあげる環境であってほしかった。
このとき官でも民でも誰でもいいけど、誰かが「今、最優先でやるべきこと」を教えてあげていたら違ったのに、と感じずにはいられませんでした。
B夫妻の現状
B夫妻が高知を去ったのは数年前で、今はまったく別の県で、農業を目指してやり直しをされています。こんな貴重な農業の担い手を逃したのが、本当に残念ですね・・・
トラブルを回避できたかもしれない分岐点
A夫妻、B夫妻の話を聞いていると、トラブルを避ける・乗り越える分岐点は、共通して3つほどあったように感じます。
- 自治体を含め、他人の言葉を信用しすぎない
- 第二、第三の矢を用意しておく
- 相談相手(客観的な第三者)の意見を持てる環境にしておく
まず入り口のところで、移住のときに、誰か(組織を含め)信用しすぎない、というのは重要に思いました。
疑心暗鬼になれ、と言うことではなくて、
「しょせん人間のやること」
という諦観が必要なように思うのです。
役所だろうが、議会だろうが、中身はふつうの人間の集まり。
間違いもするし、忘れもするし、保身にも走る。
個人のツテでの移住ともなろうものなら、もう「話半分以下」くらいに聞いておいたほうがよいでしょう。
そんなものだと思えば、自然と「第二、第三の矢」を考えながら動く発想になります。ここが2つ目のポイント。
一番アテにしているもの、たとえば給付金が受け取れなかった。農場がなかった。どうするか。
しかし、移住者の場合、そんなにすぐ色んな手が思いつくはずもありません。
そんなときに、第3のポイント、相談相手(客観的な第三者)の意見を得ることが重要になってくるわけです。
家族で話し合うだけでは、あまり新しい考えや視座は出てきません。
まさに「三人寄れば文殊の知恵」で、色んな人に相談する中で、自分では思いもつかなかった方法で開けていくことがあります。
ただ、これが言うほどカンタンでないことはわかっています。(できれば苦労しない!)
近すぎる人には話しにくい。
遠すぎる人には伝わりにくい。
これが、移住者にとっての現実です。
まとめ
「順風満帆な移住生活を送っているように見える人」だって、その手前できっといろんな壁があったはず。だからこそ、こうした経験値を共有することにはすごく価値があります。
今後、移住を考える方たちにひとつの例として参考になればと思います。
農業を目指す移住者は多いし、農業は「国」と強く結びついた事業です。
もしかすると、A夫妻やB夫妻のような例は、もしかすると移住者のトラブルではもっとも多い例のひとつかもしれませんね。
苦い想い出を後進のために語ってくれた、A夫妻・B夫妻に感謝しています。
これから移住を考えている人の参考になれば嬉しいです。