Amazonの本が聴けるサービス、Audible。
試したことありますか?
実は以前1度契約していて、すでにやめていたんですけど、先日、クルマで東京まで行く(なんだかんだ片道12時間くらい)ことがあったので、さすがに道中ヒマかなと思い、久々にAudibleを覗いてみたら。
なんと、以前は1か月に1,500円払うことで1冊もらえる、というのだったのが、同じ1,500円で聴き放題サービスになっていてビックリしました。
30日間無料というキャンペーンをやっていたので、旅行中だけでもいいかな?と改めてやってみることに。
ちなみに、Audible全体で40万以上の作品を配信していて、聴き放題できる日本語のタイトルは17,000作品程度。
そこで手を出したのが、村上春樹氏。
実は何度か本で読んでみたんだけど、いまひとつ良さがわからなかった(陳謝)。
でも世界中のハルキストが何にそんなに惹かれているのか、やっぱり気になる。
本を開くのはおっくうだけど、聴いてみるとなんか違うかな?
まずは、かつて数ページで投げ出してしまった(陳謝)IQ84。
杏ちゃんと柄本時生さんのナレーションに耳を傾けつつ、高速をひた走る。
ん?
なんか…
めっちゃ面白くない?
青豆というクールな女性主人公の雰囲気が、杏ちゃんの声にぴったり。
一方、ひょうひょうとした、優しい男性主人公天吾も、これまた柄本時生さんが合う。
IQ84、しかし長くて、往復24時間では足りなかった。
そう、「聴く」のは「読む」よりずっと時間がかかることは要注意です。
こうして聴いてみると、村上作品は状況描写や人物の動きの描写が、他の小説と比べてもとても丁寧。
丁寧=長くなるということなので、本で読むとちょっとダレてしまう(陳謝)わたしも、音で聴くと、その長さが逆に情景をふくらましてくれる。
味を占めて、「海辺のカフカ」にも手を出してみた。
ナレーターは木村佳乃さん。
これまた、こんなに面白いの?とビックリしかない。
オットも同様に村上ワールドin car が気に入ったようで、急に夫婦にブームが来て、そのあとも次々聴いております。
Audibleを聴くシチュエーションは、移動中とか移動先とかがわりと多いんじゃないかと思うのですが、それと村上作品とは、相性がすごく良いような気がする。
なぜなら、村上作品の場所やシチュエーションの設定が、独特だけどあまり強いものではないから。どんな天気で、どんな場所にいても、聴いていて違和感がない。
言い方を変えると、村上作品が全体に(良い意味で)「無色」な感じがするからかな、と思う。
これは、意外に重要なことなんですよね。
それをわたしは実体験で痛感しました。
ずっと以前、中国で30時間の長距離列車移動をしなければならないことがあり、
と張り切って持って行ったのが、スタンダールの赤と黒(上下巻)。
野心家で美貌の青年ジュリアンと、名士の奥様、レナール夫人の不倫関係から始まる、湿度の高い恋愛小説です。世界の十大小説の1つと言われるほどの、不朽の名作。
列車に乗り込み、さっそくジュリアンとレナール夫人の世界に浸ろうかと…
「ハオ!ハオ!!」
なんか中国人が叫んでる。
「俺にも弁当くれ!」
なんか中国人が食ってる。
「うるせぇんだよ!」
「お前こそ!!」
なんか中国人が喧嘩してる。
どっちもうるせぇ!
てか、全員うるせぇ!!
窓の外を流れる景色はどこまでも茶色の平原で、ロシア感ゼロ(当たり前だ)。
車両内には、独特の中国醤油の香り。
視線をふと下げると、床にはあらゆる種類のゴミ。
「そのときジュリアンの瞳は」
どうでもいい。
1ミリも頭に入ってこない。
まぁ別に中国の人々は通常運転をしていただけで、わたしの選択が悪かっただけです。
この場合、古典長編なら水滸伝とかいくらでもあるだろうに、なぜ赤と黒にした?
横道にそれましたが、つまり言いたいのは、「本の内容と、周辺環境のバランス」はかなり大事だ、ということです。
その点、「無色」感のある村上作品は、どこでどれを読んでも、そんなに違和感がない。
旅のお供には、意外なほど合っている。
しかも、つらつらとした状況描写が長いので、ドライブ中によそ見をしたり、考え事をしたり、果ては居眠りして数分聴き逃しても、案外、話がつながっちゃう(ほめてる)。
ちなみに、村上作品以外で意外なほど面白かったのは、又吉直樹氏の「火花」。
以前、本で読んだ時には、「ん?」という感じだったのが、聴いてみたらめちゃめちゃ面白かったのです。
それは、ナレーションの堤真一さんが上手すぎたからかもしれない。
ほとんど一人芝居の領域です。
役者ってすごいんだな…
↑もはや感想が本と全然関係ないけど。
本を聴くのは、どうらや読むという行為とは全然違うようだ。
又吉さんが聞いたら不本意かもしれないけど、作品世界を楽しんでいることには変わりないわけだし、まぁ、これはこれでありかな。
また、「世界のミクニ」シェフ・三國清三さんの自叙伝も痛快だった。
フレンチの巨匠、三國さんが、北海道のド田舎の漁師の息子だったとはねー!
世界に駆け上がっていく熱意のさまは、とても常人ではない。
これは本で読んでも面白かっただろうと思うけれど、聴くことで「ドラマ化」されたような味わいに。
Audibleはとにかくナレーターが豪華。
上手な人ばかりだし、著名な人であれば、へぇ、あの人がこんな読み方するんだと思ったり。
以前のAudibleはラインナップがいまいちで、聴きたい本が少なかったのですが、現在はとても充実しています。
↓想像より壮大なストーリー!で想像よりずっと面白かった。こういう、偶然の出会いも楽しいです。
移動時間が長いとついついスマホばっかりいじって眼に負担がかかったりするので、そういう意味でも、Audibleを試してみるのもおすすめです。