旅に出てから実はパソコンやWifiの調子がすこぶる悪く、全然旅の記録が残せていない状態のまま、どんどん旅程が進んでしまいます。
時系列が崩れるのですが、記憶の新しいうちに書きたいことを先に。
この2日間は、ペンシルベニア州・ランカスターに滞在していました。
こちらへ来たのはオットの強い希望でした。
アーミッシュ、という特別なコミュニティの人々が暮らす場所だからです。
アーミッシュはドイツ系の宗教集団による移民です。故国を追われて落ち着いたのがアメリカのいくつかの地域。ここ、ペンシルベニアもその一つです。
アーミッシュの最大の特徴は、移民当時(18世紀)の生活を維持していること。
つまり、電気や自動車などを使わず、農耕や牧畜などを中心に、自給自足を基本とする生活を送る集団とされています。
写真や映画などで見た、【18世紀の服装で、かつ馬車で移動する姿】は、あまりにもインパクトがありました。実際に見るまではなかなか信じられなかったです。
あんまり写真を露骨に撮っては悪いかなと思い、撮れませんでしたが、これはオットが望遠で撮った貴重な(?)1枚です。
映画としか思えません・・・
こちらはアーミッシュ独特の「ペダルのない自転車」に乗る坊や。
アーミッシュについて知っていたことといえば、
- 自給自足
- 文明を否定
- 宗教集団
- 教育は中学2年まで
- テレビ、映画、ショッピングなどの娯楽も持たない
- 結婚はほとんどアーミッシュ同士
- 酒、タバコ、コーヒーなどの刺激物を取らない
などということが中心で、「閉鎖的でストイックな集団」というイメージが先行していました。
さらに、わたしにとってインパクトが強かったのは、アーミッシュの子供が16歳になると一度親元を離れて俗世で暮らす「ラムスプリンガ」という期間に入るという風習でした。
ラムスプリンガの間は酒・タバコ・ドラッグやその他の娯楽や自動車の運転もすべて自由になります。中には、そういった娯楽や刺激で、堕落していくアーミッシュの若者も多いという説も読みました。
そうして俗世を経験した上で、「アーミッシュに戻る」か「俗世でそのまま暮らす」か選択することができるのだそうです。
いったん、そんな便利さや楽しさを経験して、アーミッシュに戻るなんてありえないんじゃないか・・・
そう思ったのですが、実際にはほとんどがアーミッシュに戻るらしいのです。
理由として、「中2までしか教育を受けてないので、一般社会では良い仕事に就けない」「アーミッシュをやめると、親族と絶縁しなければならない」からだと言われていました。
そんなの、選択と言いながら、実態は強制じゃないのかな。
なんだか、アーミッシュの子どもに生まれると、気の毒じゃないのか。
実際のところ、そんなことも思っていました。
しかし、しばらく彼らの住むエリアで過ごしているうちに(といっても足かけ3日間ですが)、だんだんそのイメージは変わっていくことに。
たとえば、アーミッシュは意外にも目が合うと必ずあちらから「ハロー!」とか「今日はいい天気ね」など声をかけたりしてくれます。
遠目でも、わざわざ手を挙げて挨拶してくれるんです。
これには驚きました。ふつうのアメリカ人よりむしろフレンドリーです。
強制されて仕方なくアーミッシュをしている風には、とても見えなかったのです。
それに閉鎖的でもストイックでもない雰囲気。
またファーマーズマーケットでは、きびきび働き、わたしたちを含めた【一般人】相手に商売をするアーミッシュがたくさんいました。
コーヒー売りのお姉さん。制服じゃなくて私服だから・・・
彼らの作る「ソフトプレッツェル」。
手作り、出来立てで、めちゃめちゃ美味しくてびっくり。
レモネードやりんごジュース(アップルサイダーと呼びますが、炭酸は入ってない)も、自然そのもの。
わざわざ「オーガニック」「有機」とか書いていません。彼らにとってはそれが当たり前なので。
それでいて値段が安く、申し訳ないくらいでした。
アーミッシュの博物館的なところも訪ねました。
やや観光地化されている感じはありますが、まとまった情報を得るには良いかと思います。
現地で色々調べたり、聞きこんだり(主にオットがですが)した情報によると、マスコミによって【ねつ造】されているアーミッシュの話もあるし、時代とともに変わっているところもあるということ。
だから今回、これまでの情報が間違っていたと知ったことも多くありました。
- × 自給自足である 〇 農業をしているのは2割程度。(あとは大工とか色んな仕事をしている。会社勤めはせず、基本は自営業。)
- × 資本主義を嫌う 〇 買うものは買う。だから現金収入も必要
- × ラムスプリンガのあいだに身を持ち崩す若者が多い 〇 それは本当にごく一部
- × アーミッシュをやめると、家族と絶縁 〇 その必要はない
- × コーヒー飲まない 〇 コーヒーは好き。(特にアイス)
など。こうしてみると、「こうだったらオモシロいのに」というマスコミの考えでイメージが作られてるんじゃないか?という気がしてしまいます。
確かにアーミッシュの家の前では、「良心市」的に色んなものを売ったりしていて、しっかり「市場経済の中で」働いているんだなぁという印象。
こんな風に、「AといえばB」という説もあり、アーミッシュの情報は聞くほどにわからなくなるという面もありました。
でも彼らが本当は何を考えているのか、どんな暮らしをしているかなんて、いくら情報を集めても外部の人間に完全にはわかるはずはありません。
ただ、アーミッシュが「平和主義者」であり、何より争いを好まない穏やかな集団であるという点だけは、真実のように思えました。
何より面白く感じたのは、「世界でも最も新しく、豊かな文化を享受している大都市在住のアメリカ人が、アーミッシュを見るために、大挙して押し寄せてくること」です。
ここに来るアメリカ人は何を求めてるのかね?
そんなことをオットとも話しました。
アメリカ人が忘れかけている「開拓者精神」を想い出し、原点回帰したいのかもしれません。
便利過ぎる世の中で、逆に疲れているのかもしれません。
そもそもわたしたちだって、なぜアーミッシュに関心を持ったのかな?
自分でもよくわかりませんが、アーミッシュ的な人々が存在し、しっかりコミュニティとして根ざし、そしてその生活が幸せであるということを確かめる(感じる)ことで、「そういう生き方もある」という、救いが感じられるのかも、しれません。
高知に来る都会からの移住者の中には、まさにアーミッシュ的な生活に憧れて実践しようとしている人もたくさんいます。
なるべく電気を使わず薪を使う、自給自足を目指す、動物と暮らす、・・・(さすがに今のところ馬車使いはいないけど)
わたしたちはそういう感じとは少し違いますが、そうしたい気持ちも、今回何となくわかったような気がしたのです。
ここを離れるころには、だんだん馬車も見慣れてきました。
何でも慣れるものですね。
広大な土地を、どうやって馬耕してるのかと思ったら・・・
拡大すると、ウマ、連結しています。すごい!
電線のない世界というのは、ものすごく綺麗です。
「是」とか「否」とかとても一言では語れない、アーミッシュの世界でした。