暮しの手帖 が好きです。
有名なので説明するまでもないですが、創刊は1948年という伝統ある生活雑誌。
もともとは戦後間もない、モノのない時代にあっても美しく暮らしたいという女性へのおしゃれを提案する”スタイルブック”としてスタートし、それに「食」「住」の要素が加わって、生活総合雑誌となりました。
<現在の最新号>
もちろん昔から知ってはいたものの、東京であくせくしていたわたしには、こんな”野菜を天日に干しましょう”とか”ミシンかけをしませんか”みたいな内容の雑誌は、無縁でした。
むしろ「暮しの手帖」を書店で見かけると「へぇ、いいですねぇお宅は優雅で」と内心揶揄しながら、ビジネス誌を手に取っていたものです(性格悪!!)。
しかし移住してしばらくしてからふと書店で手に取ってみると、あら不思議。
いつの間にか、自分にマッチしていることに気づきました。
「暮しの手帖」は別に田舎暮らしを推奨しているわけではないんですが、書いてあることが、都会のど真ん中よりは、やはり田舎暮らしのほうがピンとくるというか、現実味のあることがけっこう多いのです。
そもそも「ざるで野菜を天日干し」とか言われても、東京では排気ガスが気になるとか、残業が続いたら取り込むの忘れそうとか、けっこうハードルが高いものです。
それが田舎だと、「そっか、干すと美味しくなるんだな」といってすぐに庭に置いてみたりして完了。
たまにはミシンで何か縫ってみるか、と思っても、都会だと「夜はうるさくて近所迷惑」「週末は忙しいし」でいつやるんだよ、って話です。
でも、田舎だと隣家は50メートル先なのでいつでも問題なし。
要するに、「暮しの手帖」が提案する、ちょっとの時間と手間をかける暮らしというのが、わりと田舎の環境や時間の流れでこそ、実現しやすい。
アンテナに引っかかることが、やろうと思えばひらりひらりと実現できるというのは、実はかなり快感なのですね。
でもって、”移住者がいかにもやりたがりそう”なことがこの雑誌には意外と詰まっているので、たぶん先方にそんなつもりはないんだけど、「暮しの手帖」は結果的に移住生活を全肯定している。
と、勝手に思っている。うれしい。
まぁ、そういうわたしの一方的な情念はさておき、雑誌としてもたくさん好きな部分があります。
まず、「暮しの手帖」には、広告が一切ない。
だから何かにおもねることなく、書きたいことだけを載せられる。
一般の雑誌って、よく見ると半分くらい広告なんですよね・・・
記事だと思って熱心に読んでたらこのページ全部広告じゃねぇか、ってことありません?
「暮しの手帖」は、全編が本編です。そういう心意気、スキ。
その分、多少価格は高めですが(特別号を除き、通常は998円)、その分、中身が詰まっているので、実質的には高くはないと思っています。
2つめに、写真の雰囲気。
どちらかというと、フィルムカメラで撮ったような、ちょっとだけなぜか懐かしい感じの写真。美味しいものの写真が多いのも好き。
このあたりをぼーっと眺めるだけの時間も、貴重。
3つめに、文字量も結構多いところ。
料理家、写真家、評論家、各種芸術家など、いろんなジャンルの人の文章が読めます。
あまり頭を使いたくないときは写真や絵のページをめくり、元気のあるときはじっくり文章のページを読んだりしています。
さらに発刊が隔月というところ。ちょうどよい。
しょっちゅう出てくるより、なんとなくありがたみがあるんですよね。
年に6冊、季節感がダイレクト。
・・・と、いかにも「暮しの手帖」みたいな感じのいい生活ができているようなことを語りましたが、現実は「今日もやりたいことの半分も終わらん」の繰り返しです。
それでも寝る前にちょっと「暮しの手帖」を見ていることだけで、「良い暮らし」ができているような気になれて(他力本願)、安らかに寝られます。
即効性のある点滴です。おすすめ。