私は若い頃から、時々メンタルが不調になることがありました。
季節性は特になく、大抵は何かの端境期に起こることが多かったように思います。
大きなプロジェクトの後、転職活動中、等々。
ところが、高知に移住して林業を始めてからは、決まって夏場(6月~9月くらいの間)、つまり「いわゆる林業シーズンでない時期」に、このメンタル不調症状が出ます。
逆に、秋から春にかけての林業シーズンは、メンタル面はきわめて健康なんですよね。
今回はその話をしたいと思います。
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メンタル不調の実際
メンタル不調といっても、社会生活に大きな支障をきたすほどではないのですが、なんとなく気分が低迷した状態です。
そのような状態とは全く無縁の妻は、そんな私を見ても、
いたってノンキな様子。
でも実はメンタル不調のときは、どんな慰めや励ましも効き目はなく、普段通りに接してもらうのが一番ありがたいのです。
それを知ってか知らでか、ノンキな妻の態度にはいつも感謝しています。
メンタル不調になったら、ただひたすら時が過ぎるのを待つしかないのです。
そう、雪山で嵐から身を守るためにビバークするように(したことないですが)。
それでも、妻も気にはなるだろうし、自営業で四六時中一緒にいるパートナーが陰気な様子では面白くないでしょう。
なんとかメンタル不調にならない良い方法はないものか・・・いろいろ試してきました。
その方法を探る前に、まず「なぜ林業シーズン中はメンタル不調にならないのか」という理由を見ていきたいと思います。
なぜ林業シーズン中はメンタル不調にならないのか
第一に、林業は身体と頭をフル活用するので、毎日ヘトヘトになり、良く寝られます。
山仕事では、日に一万歩は歩きます。それも平地ではなく、大概は傾斜地です。
これだけでもかなりの運動になりますが、それだけではなく、チェンソーを使ったり、丸太を抱えたり、上半身もフルに使う全身運動です。
加えて、林業は、実はかなりの頭脳労働でもあるのです。
10年、20年先にも想像力を働かせながら、目の前のことに対して効率的で安全な段取りを考えなければなりません。
一日仕事をしたら、もうくたくたです・・・
第二に、林業においては、毎日が挑戦と冒険の連続。
新たに道を作ることはもちろん、木を伐るにしても、1つとして同じに生えている木はありません。その都度、新たな挑戦です。
もちろん、失敗したら反省はしますが、すぐに次の挑戦が目の前にあるので、いつまでもくよくよしていられません。
第三に、森林浴効果(?)。
これは実際のところ、良くわかりません。
人間は元々自然の中にいたから、遺伝子が自然に適応するように出来ているという説もあります。
どうなのでしょう。
しかし山に入っていると、なぜか気持ちが前向きになれるのです。
私はその理由は生命の息吹にあるのでは、と思っています。
健全な森は多様な生命の息吹の宝庫です。
これは全く個人的な感覚ですが、同じ生命体である人間も、その多様な生命の息吹に触発されて、細胞が元気になるのでは?
つまり一言でいえば、林業の魅力(特に「1人林業」の場合)は「自然と対峙する日々の濃密さ」にあり、これが私のメンタルを健康に保ってくれている気がするのです。
なぜ林業シーズン外ではメンタル不調になるのか
さて、翻って、基本的に山に入らなくなる夏場はというと。
仕事はカフェ業が中心になります。
私は、真夏でも薪を燃やしてコーヒーを焙煎しますので、かなりの体力を消耗します。
それに、コーヒー豆も一粒として同じものはなく、季節によっても条件は異なり、毎回の焙煎は必ずしも同じ作業にはなりません。
一概に、林業とカフェ業の「どちらが大変でどちらがラク」とは言えません。
とはいえ、カフェ業は命に関わる作業はない(たぶん・・・)平和な仕事ですし、また、毎回同じクオリティの商品を提供するために、むしろある程度「ルーティーンを粛々と守る」「再現性」も重要です。
私は1秒、1分単位でコーヒー抽出のスピードを守っています。
また、高知の夏は暑すぎるがゆえに、逆に冷房の効いた室内で過ごすことが多くなり、どうしても林業シーズンよりは、単純に「運動量」も減ります。
かたや、自然と対峙する濃密な林業シーズン。
かたや、半分ルーティーン作業を守る平穏な日常の、夏のシーズン。
どちらも悪くはないのですが、ギャップは大きい。
この落差が、「メンタル不調」を招く要因ではないかと思っています。
夏場のメンタル不調克服法
移住後の5年間で私が行ってきた、メンタル不調の克服方法は3つあります。
一番良い方法は旅に出ることです。
旅には冒険や挑戦の要素があり、時折見知らぬ土地で思わぬ出会いやドラマが生まれることもあります。
歩き回れば適度な運動にもなります。自然の豊かなところに行けば、なお効果的です。
しかし、時間的にも経済的にも、6~9月の間ずっと旅に出る余裕はありません。
加えて昨年からのコロナ禍で、そもそも旅行どころではない状況ですよね。
昨年はどうしたかというと、ひたすら本を読みました。
メンタル不調克服の第二の方法、それが読書です。
ビバーク中はジタバタせずに籠って読書です。フィンクション・ノンフィクション問わず、特に紀行モノ、冒険モノ、海外モノが多かったですね。
本を読むことは、ある意味で旅行や冒険の疑似体験にもなります。
そして、第三の方法は、プール通い。
アラフィフのオッサンがプール通いというのも全く絵にならないですが、四万十市には人口規模から見れば非常に立派と言える市営の屋内プールがあって、かなりお薦めです。ここの回数券を買い、週1~2回通ってひたすら泳いでいました。
この読書&プール通いという、夏休みの小学生みたいな過ごし方は意外と効果があったようで、気持ちがあまり落ち込まずに済みました。
今年の夏はというと、また読書とプール通いはすると思いますが、新たな挑戦も控えています。
そのことはまた別の機会にお話しします。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
▶ 【木曜更新】オットの連載 小さな林業の始め方 ⑰林業とコーヒーと(前編)