想う

空港で、クマと手をつなぎ、泣いていた話

 

永遠のミニマリスト志望者なので、いわゆる「雑貨」というのはなるべく少量にとどめています。

実用的な用途がなく、ホコリのたまりやすい「ぬいぐるみ」はミニマリスト共通の仮想敵なのであります。

しかしながら、もう10年、そしてこれからも、決してうちから出て行かないだろうこれ・・・

 

真っ白で、さわってもらえないのが残念ですが、フワッフワの手触りです。

それもそのはず、これはいわゆるハロッズベア、中でも「my first Harrods teddy」というシリーズで、要は赤ちゃんや小さい子へのプレゼント用のもの。

毛深くて見えにくいですが、足裏に書いてあります。

 

昔むかしのこと。

わたしは東南アジアをバタバタめぐる出張に出ていて、

  • クソ暑い
  • クソ忙しい
  • おなかこわす
  • 仕事でミスする
  • 客に怒られる

とさんざんな目にあっていました。

 

そもそも出張に出る前も残業続きで、気力と体力が限界に来ていたところにこの状況。

 

数か国回って、最後にようやく帰国便に乗るクアラルンプール空港にたどり着いたのですが、そこのチェックインカウンターで、今度はなんかチケットが間違っているとかなんとかのトラブル。

わたしのせいではない、ささいなトラブル。

普通なら「めんどくさいなぁ」くらいでやり過ごすのに、そのときはそれまでの色んなものが一気に溢れたように、プツンと何か切れました。

はぁぁぁぁぁぁぁ、と内臓ごと出そうな深いため息。

 

今でも覚えているのですが、そのとき、突然、柔らかいものが欲しくなったのです。

何か柔らかいものに触れていないとおかしくなりそうな気がしたのです。

 

ともかくチェックインを何とか終えると、クアラルンプール空港の免税店に走り、

「一番柔らかいもの」

をめざし、手に取り、そのまま購入してきました。何の借り物競争か・・・

 

それがさっきのこれだったわけです。

 

横から見るとおなかポッコリでなおさらかわいい。

買ってすぐ袋から出し、わたしとクマはさっそうと手をつないで空港を歩いていました。触れていたかったからです。

でもぬいぐるみと手をつないでいいのは5歳まで。35歳はどう見てもただヤバい。

 

そのまま搭乗しようとしたら、さっきのチェックインのときのトラブルがまだ何か尾を引いていたようで(それともただヤバいから?)、今度は搭乗口で、また「STOP!」をかけられてしまいました。

 

そのとき、なぜかよくわかりませんが、「また自分を拒否された」とすごく感じてしまいました。

するとそこから涙が止まらなくなり、そのまま搭乗口でクマを抱えておんおんと泣きはじめ・・・

 

ヤバい人から、ものすごくヤバい人に昇格した瞬間。

 

「チケットをもう1回見せてと言っただけ」のマレーシア人の空港スタッフもびっくりして慌てて、なんだか偉い人まで呼んできて、ナゾのクマ連れ日本人について大いに議論が始まる始末。

 

※ あとから思ったのですが、「偉い人よりヤバい人」のほうが世の中を動かせるみたい。

 

しばらくしたら落ち着いて、さーっとクマを連れて搭乗したのですが、たぶんマレーシアにおける日本人のイメージを若干悪くしたとは思います。すみません。

 

ーーー

 

このクマを見ると、頑張っていたころを懐かしく思うし、そのころの自分も誉めてやりたい気持ちもあるけど、それでもやっぱりそこに戻ってはいけないのだ、と改めて思うのです。

 

このクマの子は、「何を本当に大切にすべきかを、徹底的にいつも考えろ」というメッセージを常に送ってくるような気がしています。

 

わたしも弱いひとで、何かあるごとに、クマに「それが大切なら、それもいいと思うよ」と言わせる、勝手にそういう役割を与えてしまっています。

 

ちなみに心がちょっとカサカサしているなぁと思ったら、柔らかいものに触れてみるっていうのはいいですよ。

まず理屈抜きに、ホッとします。

それから、「柔らかいものからは柔らかい反応」しか返ってこないことに気づきます。

振り返って、「いまのわたしは、世の中に対して、大切な人に対して、どんな反応してるんだろう?」と考えるきっかけにもなるような気がします。

では行ってらっしゃいませ!(^^)