日々の暮らし

【しまんと暮らし】四万十へ来るときに持ってくるべきもの

CONTENTS

高知から「ついでに四万十」は可能か

はじめにお断りしておくと、「四万十」という言葉が指すものは結構複雑なのだけど、ここではざっくり「四万十川とその流域」というイメージでお話します。

ーーー

東京から

「今度、高知に行くので、ついでに四万十にも寄るね!」

と言ってくれる人も結構いて、それ自体はとっても嬉しい。

かつてわたしもそうだったように、高知に行きさえすれば、四万十川がさらっと見られるんじゃないか、と思う東京都民は多いように思う。

ただ、実際には四万十川は全長196kmもあるのだけど、実は上流は山の中だし、下流は西部の端だし、なんだか微妙にアクセスしづらい。

したがって、高知 → 四万十川 とも直結しないし、四万十川 → 四万十市だけと直結するわけでもないのだけど、このことは意外と知られていない。

高知県の広さがよくわからない

でもなぜ都民から見て、

高知 → 四万十川 → 四万十市

という構図で好アクセスなイメージになりやすいのか。

名前のトリックもあるけれど、これまたかつてのわたしがそうだったように、高知県の広さがそもそも感覚的に全然わからないことが要因のひとつではないかと思う。

なので、改めて高知の拠点となる龍馬空港から四万十市までの距離を数値で説明すると、Google的には

  • 片道 2時間15分
  • 距離 127km

となる。でも慣れてない人は、片道3時間は見たほうがいいと思う。正直、日帰りは厳しい。

ちなみに、「東京都庁から山梨県庁(甲府市)」までもなぜかちょうど127kmで、そう考えると、これは日帰り旅行ラクラクな距離。

と思いたくなるのだが、実はここに落とし穴があって。

東京から甲府まではほとんど高速道路。

しかし高知から四万十市への3時間の道のりは、すべて高速道路ではない。

最後の1時間(四万十町から四万十市)はずっと一般道、しかも片側一車線の箇所が多い。

これが地味に、キツイ。

さらに、そんなことを言って地図を見ている間に、気づかなかった数々の疑問が噴出しだす。

「え?四万十町と四万十市って違うの?」

「だいたい、四万十川ってどこからどこ?」

「奥四万十ってどっかに書いてあったけどなんなの?」

「仁淀川と四万十川の両方を1日で見るつもりだったのに!」

 

ともかくこのあたりで、日程が「1泊2日」くらいのひとは、

「あの~四万十は、またにするね!」

との結論に落ち着く。きわめて妥当な判断。

東京都民の距離感覚

わたしの友人はほとんど東京在住なので、「都道府県の端から端」というのをつい東京の感覚でとらえがち。

けれど、実は東京都の面積が2,188㎢であるのに対し、高知県は7,105㎢と、すでに3.5倍くらいの規模の開きがあるのだ。

しかも東京は都下を除き23区だけで言うとわずかに619㎢しかない。

高知県の10分の1以下!

わたしも、高知県が東京と較べてそんなに広いなんて住んでみるまで全然知らなかったし、みんな知らなくて当然なんだけれども。

あとは、高速でアクセスできない地域があるなんてあまり想像したこともない。

「飛行機降りて高速で2時間あれば、だいたいどこでも行けるんじゃないの?」という感覚で日本をとらえている都民は結構多いのではないかと思う。

「何もない」を愉しむには時間が必要

前置きが長くなったけど、要するによほど鉄人でない限り四万十川や四万十市は、「高知市のついでに日帰りでフラッと立ち寄れる」ところではないと思っていたほうが平和だ。

というより、「そんなに急いで来るべき場所ではない」というほうが適切かもしれない。

 

ここには、四万十川はあるけれど、他に世界遺産があるわけでも博物館や美術館があるわけでも、ショッピングエリアがあるわけでもない。どちらかというと、何もない。

ただ、不思議なことに本当に「何もない」となると、人間は思想なり行動なり、何かを自分から生み出そうとしはじめる。

でも、それにはある程度時間がかかる。

そうしたときに、はじめてこの場所の山や川や海が、チカラを貸してくれはじめる。

よくわからないけれど、自然から何かを受けとるには、ともかく一定の時間が必要なようなのだ。

四万十に来るならば、手ぶらで構わない。唯一持ってくるべきものは、時間だけ。

たぶん、眼に見えない多くのものを持って帰れると思います。